事故多発…民間人が「自衛隊の武器弾薬」を運ばされている

業界の猛反発も無視して
時任 兼作 プロフィール

現場は反発したものの

まずわかったのは、船舶業界では、自衛隊員や自衛隊の武器・弾薬を民間フェリーで輸送することに対して、乗務員らが以前から強く反対しているということだ。防衛省が民間フェリーとその乗務員を「利用」すると公言したことがきっかけだった。

2014年8月、防衛省は尖閣諸島を含む南西諸島の有事を想定し、自衛隊員を戦闘地域に運ぶ際、民間フェリーの船員を予備自衛官として採用して現地まで運航させる運用方法について検討を始めた。

 

そうした最中、安全保障関連法が成立し、自衛隊法や武力攻撃事態法などが改正されると同時に、集団的自衛権の行使が認められ、米軍や外国軍への後方支援の内容が拡充された。武器使用の権限も大きく広げられたのである。2015年9月のことだ。

これに勢いを得た防衛省は、2016年1月、次年度予算案に海上自衛隊の予備自衛官補の採用予算を盛り込んだのだった。

この間、海事関連産業を束ねる「全日本海員組合」は、民間船員を予備自衛官として活用することに断固反対する声明を発するなどしてきたが、完全に黙殺された。同組合は「事実上、民間人の徴用につながる」と猛烈に反発。防衛省に厳重な申し入れを行った。

また、同年5月には「安保法制と労働者・労働組合」をテーマとした集会が国会で開かれ、港湾やトラック、倉庫などに働く労働者で組織される「全日本港湾労働組合」は「軍港化阻止」を表明、パイロットや客室乗務員らからなる「航空労組連絡会」も「武器・弾薬輸送は拒否」との声明を出した。民間輸送業界がこぞって「自衛隊に協力はしない」と宣言したのである。

ところが、防衛省の強気は変わらなかった。それもそのはず、政権が後押ししていたからである。

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