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ファーウェイ事件とは何だったのか? その既視感とトランプの恐怖心

歴史は繰り返さないが、韻を踏む。

既視感を覚えずにはいられない時代

「歴史は繰り返さない。だが、韻を踏む」

『ハックルベリー・フィンの冒険』で有名なアメリカの国民作家であるマーク・トゥエインが残したこの言葉を、最近、アメリカの書きものの中でよく目にする。全く相互に関係のないエッセイや評論、論文、紀行と、中身もジャンルもバラバラなのだが、なぜか、共通してこの表現を見かける。

おそらくは、それくらい今という時代が、アメリカ人にとって、少なくとも公けに文章をしたためるような高い教育を受けたアメリカの人たちにとっては、何らかの既視感を覚えずにはいられない時代なのだろう。どこかでかつてのアメリカ史で起こったことと似たような事態が生じていると感じてしまう。

普通に考えれば、似たような事態を前にして「歴史は繰り返す」とこぼした上で一種の運命論に身を任せてしまいたくなるところだが、しかし、それは歴史が手招きする誘惑に過ぎず、同じことが反復することはない。その一度我が身を振り返る反省の身振りがあるからこそ、「韻を踏む」という言葉を付け加えたトゥエインの言葉が思い出されるのかもしれない。

 

確かに似たようなことは起こっている、けれども、それがもたらす結末は必ずしも同じものになるとは限らない。いや、むしろ、全く異なるルートへと向かうはずである、と。そうして歴史の誘惑を振り払う。

こんなことから書き始めたのは、昨年末あたりから起きている一連の事件が、どうもかつてあったことと似ているなと感じている自分がいるからだ。その自分に対して、いやきっと辿り着く先までは反復はしないぞ、と戒めている。

もったいぶるのはこれくらいにしよう。その事件とは、ファーウェイを巡る事件だ。

すでによく知られているように、中国有数の大企業で、今や世界第2位の通信機器メーカーでもあるファーウェイに対して、アメリカのトランプ政権は、この5月、安全保障上の懸念という理由から、アメリカ企業との取引を禁止した。

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半導体製品など多くの高機能部品の調達をIntelやQualcommなどのアメリカ企業に頼っていたファーウェイからすると、この措置は懲罰的なほど甚大な影響を及ぼし、今後の業績見通しを大幅に下方修正せざるを得なくなった。しかも、トランプ政権の追撃はこれにとどまらず、安全保障上の同盟国にまで、事実上、同じ行動を起こすよう促している。ファーウェイ包囲網の構築である。

なぜトランプ政権はこのような判断に至ったのか。その理由は一種の恐怖心からだ。

次世代高速無線通信網である5Gの時代の到来を控えて、その通信網の配備にファーウェイ製の機器を利用していくことは、近未来で交わされる世界中のコミュニケーションがすべてファーウェイの掌の上に、ということは事実上、中国政府の掌に上に置かれることになる。盗聴の可能性、ハッキングの可能性、監視の可能性、等々、数多の懸念が渦巻いてしまう。