食品ロスは「気象」で解決!「豆腐指数」で売り上げを予測せよ

気象データを利用して冷奴を売りまくる
ガストロノミア プロフィール

しかも、単純な気温の上下ではなく、「体感気温」の変化が豆腐の売れ行きと密接に関係していることもわかったんです。これは相模屋食料さんへのヒヤリングがなければ気づくことのできない視点でした。

というのも、長年豆腐を生産してきた相模屋食料の方も、「暑ければ売れる、寒ければ売れないという単純な話ではない」ということをおっしゃっていたんです。

その話を聞いたあとで、「であれば、SNSユーザーが『暑い』『寒い』とつぶやいている総数をカウントして、体感気温を測る指標にしてみてはどうか」とチームメンバーが提案してくれました。

「それはいいね」と実際に試してみたら、これが見事に寄せ豆腐の需要予測の精度を上げてくれたんです。

体感気温指数と寄せ豆腐指数の関係を記したグラフ
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──人がSNSでつぶやく「暑い」「寒い」というワードは、必ずしも実際の気温と結びついているわけではなかった……?

重要なのは当日の気温ではなく、前日との気温差だったんです。

面白いことに、人は前日との気温差が大きいほど、暑さや寒さを感じやすいんですね。

なので、需要予測のための体感気温を正確に測るには、当日の気温だけでなく、前日までの気温も見なければならないのです。

たとえば、冬場にいきなり1日だけ最高気温が12度の日があったりすると「かなり暖かい」と感じますよね。でも、これが夏だったらどうでしょうか?

夏場の12度はとても肌寒い。つまり、「人は気温に慣れる生き物だ」ということなのでしょうね。

短期予測の寄せ豆腐、長期予測の冷やし中華つゆ

──同時に進めたというミツカンの冷やし中華つゆの事例は、相模屋食料の事例とどのような点で違ったのでしょうか。

豆腐は賞味期限が短く、毎日生産する食材ですが、冷やし中華つゆは賞味期限が長いので夏季を通して長期的な視点で在庫数をコントロールする必要があります。

なので、「短期的な需要予測は相模屋食料、長期的な予測はミツカン」というのが私たちのなかでの棲み分けでした。

「短期と長期で予測する」というのは、私たち気象業界の人間が普段からしていることでもあるので、この2つの事例で同時に成果を残せたのはとても喜ばしいことです。

──どのような推移で冷やし中華つゆの廃棄率を減らしていったのでしょうか。

経済産業省のプロジェクトは3ヵ年計画でした。

1年目にはシミュレーション上で最終在庫を40%削減することに成功しました。

その翌年は実際に生産量を調整していただいて20%の在庫削減に成功、そして3年目はさらに20%の削減に成功しました。

事業化後の今も、年々オペレーションの精度を上げることができていると思います。

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──近い将来、天気予報ならぬ「食料予報」が一般的になる日も来るのでしょうね。

相模屋食料やミツカンのように、個別の企業に最適化された形で需要予測システムを開発するのにはどうしても膨大なコストがかかります。

今後は、より多くの食品業界の方に活用していただける汎用的なシステムを開発していきたいと考えています。

運送も気象データでムダ削減!

──食品ロスを改善していくと、それを運ぶ運送業界でのムダも削減できますよね。

そうですね。運送の話で言うと、ネスレ日本とも実験しました。

ネスレ日本は、関東に荷を運ぶ際に高コストなトラックで運ばざるを得ない、という問題を抱えていたんです。