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食品ロスは「気象」で解決!「豆腐指数」で売り上げを予測せよ

気象データを利用して冷奴を売りまくる
猛暑や豪雨、台風の情報をリアルタイムで教えてくれる天気予報。私たちの生活には欠かすことのできないこの気象データが、食品ロスの削減に多大な貢献をしていることをご存じでしょうか?

日本気象協会主任技師の中野俊夫さんらが膨大な気象データを利用して開発した「豆腐指数」は、冷奴に使われる寄せ豆腐の廃棄率を削減させることに成功。さらに、冷やし中華に使われるつゆの廃棄率も50%削減しました。

なぜ、これほどまでに高精度な食品需要予測を成し遂げることができたのか。プロジェクトの経緯をうかがいました。

「気象」と「食品」。異分野同士の出会いの軌跡

──日本気象協会が2017年にスタートさせた「商品需要予測事業」。このプロジェクトはどのような経緯で始まったのでしょうか?

まず、私の個人的な動機として「気象予測のシステムを活用して、何か社会に役立つ事業を起こせないか」という漠然とした思いがありました。

「気象とはいったい何なのか」と突き詰めて考えていくと、3つの大きな特徴をあげることができます。

1つは、予測ができること。

2つ目は世界全体の1/3もの産業分野にアプローチできること。

そして3つ目は、地球温暖化によって気象をとりまく状況そのものが大きく変化してきているということです。

日本気象協会主任技師の中野俊夫さん
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この3つの特徴を踏まえたうえで「現在の日本社会にはどんな課題があるのか」と考えてみました。そこで真っ先に挙げられるのが生産年齢人口の大幅な減少と、食品の廃棄問題です。

そこで、市場規模が大きく、社会課題として深刻な「食」分野にアプローチしてみようと思い立ち、このプロジェクトを起案しました。

──今では企業の境を超えたプロジェクトへと成長しています。ここまで行き着くには、ご苦労もあったのではないでしょうか。

私たちの「商品需要予測事業」は、食品ロスの課題を抱えている企業と連携し、データを共有していただかないことには始まりません。

ですが、プロジェクトを立ち上げた当初は、企業側の課題をヒヤリングするだけでも一苦労でしたね。

まずはさまざまな経済フォーラムに参加し、私たちの考えや、取り組んでいきたいことを説明することからはじめました。

やがて食品メーカーの方と直接お話をすることができ、「1社だけでは食品ロスの課題を解決することは困難だ」という前提を知ることができました。

食品ロスは、それを生産するメーカーだけではなく、その食品を仕入れる小売業者や、売り場まで運ぶ運送業者など、一連の「サプライチェーン(商品を生産して顧客に届けるまでの一連のつながり)」の協力があってはじめて解決できる問題なのです。

──メーカーのみならず、小売や配送業者などとも連携するとなると、さらにプロジェクトは難航しそうなものですが……。

このような課題はかねてより経産省も認識しており、「製・配・販流通協議会」という情報交換会を開催していたんです。

2013年にこの情報交換会が一区切りとなるとのことで、「その取り組みを引き継ぐ形で日本気象協会が主導する『製・配・販連携プロジェクト』をはじめてみよう」と経産省が予算をつけてくれました。

──相模屋食料とは豆腐、ミツカンとは冷やし中華つゆのロスを削減すべく連携したわけですが、成果が出るまでにはどのくらいかかったのでしょうか。

相模屋食料とミツカンのプロジェクトを同時に進めて、ほぼ同じ時期に成果が出ました。

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このプロジェクトのフローは三段階あります。第一段階は課題の見える化、第二段階は個社での実施、そして第三段階でサプライチェーン間での実施を目指しました。どちらも始動から2年目で個社利用の段階まで持っていくことができましたね。

単に「暑いだけ」では豆腐は売れない

──寄せ豆腐と冷やし中華つゆ、どちらも夏に売れる食品です。気温が高いほどよく売れると思うのですが、それほど単純な問題でもないということですか?

そうなんです。豆腐にしても、絹豆腐と木綿豆腐は売り上げが天候の影響をそれほど受けないのですが、冷奴に使う寄せ豆腐だけは影響を受ける、という面白いデータがありました。