# 日本経済

10月からの消費増税が「リーマン級危機」より筋が悪いと言える理由

日本経済はじわりじわりと蝕まれていく
安達 誠司 プロフィール

消費増税のタイミング

6月に入ってから二転三転した消費増税問題だが、どうやら予定通り10月から実施ということで落ち着きそうな感じである。そこで、各種世論調査をみると、前回の2014年4月の消費増税時よりも、増税による景気の落ち込みを懸念する声は強いようだ。

筆者は、今の時期はデフレ克服に集中すべきであり、しかも、(長期間ほぼ横ばいトレンドであった名目GDPの水準が、そのトレンドを突破しつつあるという)もうひとがんばりでデフレ克服も実現するのではないかという状況でもあるので、このタイミングでの消費増税は「日本経済の成長」という観点から考えると「もったいない」と思う。

ところで、現状の景気だが、例えば、内閣府が発表している景気動向指数をみると、景気の先行きを示す先行指数、現状の景気の状況を示す一致指数は次第に低下基調を強めている状況である。また、株式市場をみても、日経平均株価は2万円台を維持するのが精一杯という状況で、投資家の間にも将来の景気について弱気な見方が優勢になりつつあるようにみえる。

ただし、現時点で状況が一方的に悪化しているのは、輸出産業を中心とした製造業である。これは主に、中国経済の悪化とそれがもたらす世界的な景気減速によって、電機や機械といった日本の「お家芸」産業の輸出が激減しているためである。

 

製造業の経常利益の前年比伸び率を寄与度分解してみると(図表1)、昨年終盤から売上数量の寄与度が急激に低下しており、これは輸出数量指数(もしくは実質輸出指数)の低下と連動している。

一方で、経常利益の伸び率でみた非製造業の業績は堅調である。製造業同様に、経常利益の前年比伸び率を寄与度分解してみると(図表2)、2016年の半ば以降、売上高の増加が利益の伸びに大きく寄与する状況が続いていることがわかる。

この非製造業の売上高要因の経常利益伸び率に対する寄与度の動きをみると、前回の消費増税(2014年4月)をきっかけに低下し、2016年半ばまでマイナス寄与(つまり売上減が収益の足を引っ張っていた)であったが、その後は回復し、安定的にプラスに寄与していることがわかる。

確かにこの間、個人消費はほぼ横ばいで推移していたが、非製造業全体の売上高の動きをみると、GDP統計の内需の項目でも明らかなように、個人消費の低迷を他業種(これは住宅や建設、及び人材派遣などのサービス産業)でカバーしてきたことが推測される。

次に、消費関連の指標だが、ここにきて上昇ピッチが強まりつつある。安定的に推移してきた医療・介護などの「非選択型個人サービス」の消費に加え、娯楽や旅行、外食といった「選択型個人サービス」の消費も昨年後半あたりから顕著に拡大し始めた点は注目に値する(図表3)。

また、所得環境の改善も続いている。例えば、総務省の「家計調査」における勤労者世帯の実質可処分所得は昨年から増加基調で推移している。これは雇用環境の改善が進んでいるためだと考えられる。

例えば、分母を15歳以上人口として労働参加率(分子は、就業者と失業者の合計値)を計算した場合、この値が昨年から急上昇している(図表4)。

これは、求職活動をしてこなかった「無業者」が求職活動を再開し、その多くが職を得ることができたことを意味している。

 

よく「非正規社員」の存在が問題視されるが、それ以前の問題として、無収入の無業者が就職できて収入を得ることができるようになったことは雇用環境の改善と考えてよいだろう(「非正規社員」の問題は、マクロ的には労働参加率がデフレ以前の水準に戻ってからの問題であると考える)。

ちなみにこの動きはGDP統計における雇用者報酬の動きとも整合的である。

このように考えると、一般的な懸念とは裏腹に、一部で指摘されているように、「消費増税のタイミングとしては2014年4月よりもよいかもしれない」という議論もあながち的外れではないようにみえるが、果たしてどうだろうか。

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