生物学的製剤を治療に使用

この頃、O先生は日赤医療センターを辞めて開業した。引き続き診てもらっていた。手の外科が専門だが、最新のリウマチ治療は学会や海外の論文から、いち早く学ぶ熱心な先生だった。診察で「ちょっとやせたね」「顔色がよくないよ」「疲れているなあ」など検査以外からも私の状態を感じ取ってくれた。

リウマチ治療に生物学的製剤が導入されて、、レミケードを使うのはどうかと提案された。「副作用は重症感染症で、中でも細菌性肺炎、結核などの肺病変には特に注意が必要。免疫抑制をしている状態で肺炎や細菌性肺炎を完全に避けるのは難しい。いつもマスクをして人混みに行かないようにするしかない」と説明を受ける。

免疫力アップが健康には大切なはずである。免疫力を抑制して、病を克服できるのか疑問だった。矛盾していると思えてならない。

「レミケードを点滴で2時間ぐらいかけて体内に入れていく。初回投与後、2週後、6週後、その後は8週間隔。ヒトとマウス由来で遺伝子工学的手法を用いて作られる薬だ。効果を弱める抗体が出現することがあり、MTXの内服が必要」と言われてもよくわからない。日本人の臨床例が少ないのも私の不安を大きくした。

保険適用が認められていない時期は、1回の薬剤費が7万円ぐらいした。2003年から認可され、国内での使用が開始。投与の期間によるが、月に1万5千円から3万円になった。新しい生物学的製剤が出ているが、もっと高額なものもある。

副作用に「悪性腫瘍」

副作用の上位に間質性肺炎、悪性腫瘍と説明書に書いてあった。リウマチを治したいのに悪性腫瘍、つまりがんになっては何のために薬を使っているのかわからない。リウマチは楽になっても、がんで命を落とすと元も子もない。納得がいかないおかしな話だと思った。血液検査上のリウマチ因子の数字合わせとしか思えなかった。病は全身状態で判断するべきだろう。1つがよくても患者が苦しんでいれば意味がない。釈然としなかったが、私は挑戦することにした。治りたかった。

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2時間かけてゆっくり点滴をして帰宅。すぐには身体の変化はない。夕食をすませ、早めに寝ようとベッドに横になった。眠れない。しばらくすると全身の細胞がイライラしている気がする。生物学的製剤という強力な異物にどう反応していいかわからず、全細胞がざわついている感じだ。耳鳴りがして頭が痛い。喉がカサカサして乾燥している。水を飲んでも砂漠に水をまくようで潤わない。身体の置き場がなく、自分の身体なのに自分ではない。気持ちも焦ってくる。この後、もっと大変な状態になるのではないかと不安がよぎる。これが副作用なのか。ただ耐えるしかなかった。

日曜日になっても、イライラが少しおさまった程度である。こんなに身の置き場がなく、精神的にもつらい思いをするのなら、リウマチが悪化していくほうが楽だと確信した。リウマチは全身の関節が痛いが、痛みが強かったり、うずいたりでストレートだ。わけもなくイライラしたり、精神が分裂しそうにはならない。たった1回だが、レミケードはもうしないと意志は固まった。

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