抗がん剤MTXをリウマチ治療に使う

疲れた、睡眠時間が短い、湿度が高い、低気圧がきたという時は関節の痛みが増す。手と足の変形は進んだ。小指はスワンネックになった。白鳥の首のように変形することから名前が付けられた。優美な名前だが、正常な形でない指は不便で痛みもあり疲れる。肩こりもひどく、肩甲骨まわりは岩盤が入っているように一帯が固まって盛り上がっていた。

駅で血の気が引いて座り込むことがたびたびあった。しばらく座って静かにしていると落ち着いた。「大丈夫!」と自らに言い聞かせ、平静を保っていた。

身体が痛くてつらいのが周りの人にわからないように笑顔を作った。会社の近くのレストランの店主には、「いつも元気でいいね」と言われた。リウマチはばれていないと安心した。常に笑顔でカモフラージュする。「このくらいは私の普通の痛み。だから痛くない」と思うことで痛みをごまかし続けた。

いつも笑顔でいることを心がけていたが、心は笑えていなかった Photo by iStock

リウマチの特徴である滑膜(かつまく)の増殖は手術で取り除いた。膝に水が溜まって痛い時は、水を抜いてヒアルロン酸を注射する。痛み止めはロキソニンに変わり、抗リウマチ剤はリマチル、胃が痛くなるとガスター、タケプロンという薬を同時に飲む。相変わらず睡眠障害があったので、精神安定剤のデパス、睡眠導入剤マイスリー、レンドルミン、ハルシオンなどを使い分けた。

抗がん剤のメソトレキサート(MTX)をリウマチ(自己免疫疾患、膠原病)の治療に使うのを1999年に厚生省が認可し、治療の主流となった。

私もMTXを使うことになった。MTXはがん細胞を抑える抗がん剤である。急性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、悪性リンパ腫、乳がん、骨肉腫、胃がんなどに使われる。リウマチが自己免疫性疾患なので応用されることになった

当時は成人のリウマチ患者に対して、MTXの使用は週に8mgだったが、2011年2月に16mgまで2倍の使用が可能になった。抗リウマチ薬のリウマトレックスやメトレートも成分は同じである。

副作用として骨髄抑制、呼吸困難、間質性肺炎、急性腎障害、肝障害、消化管潰瘍、血清アルブミン減少など100項目ぐらい記してある。血液中の白血球や血小板が減少する副作用もあり、抵抗力が低くなり、感染症に注意が必要。骨髄抑制にともなう血液障害も出る可能性があるという。

先生は間質性肺炎を最も気にしていた。副作用で起きる場合もあるが、リウマチ自体が原因にもなる。そのためにレントゲンを撮って確認する。放射能をできるだけ浴びたくないが、間質性肺炎は発症すると治癒することはない。死に至る場合がある。仕方なかった。

週末は薬を飲み、ひたすら耐える

毎週、金曜日の夜からMTXを飲み始め、土曜日の朝と夜に飲む。合計3回、3錠飲み、翌日から5日間は飲まない。最初は痛み止めをやめてMTXを使ったため、とにかく痛い。食事とトイレ以外は動きたくない。日曜日はただ寝て、苦痛に耐え、時間が経つのを待つ。MTXが効けば痛みが楽になると信じて耐えた。それだけが気持ちを支えた。

MTXの治療を7年間続けた。毎週末、倦怠感、痛み、頭痛、食欲不振に襲われ、ぐったりしていた。途中から痛み止めは併用したので、少し楽になった。

睡眠時間を削って仕事をし、ヘトヘトになった。MTXを飲んで週末は寝込む。この時間は必須だった。当然、月曜日から金曜日までにしわ寄せがくる。さらにヘトヘトになった。かつては海外旅行に行って気分転換をして、発散させていたのに、仕事と病のストレスが溜まっていくばかりだった。ただMTXが効くことだけを祈った。「太く短く生きる」ための暴走は続いている気がした。