アルバイト収入がないから
大学生は出費を切り詰めるしかない

フランスの子供は塾にも通わないし、家庭教師もほとんどつけないから、学部のうちはベビーシッターくらいしか、大学生にアルバイトがない。3年、4年になると、それぞれの専門分野で研修をかねたアルバイトめいた仕事が探せる学生もいるが、チャンスは少ない。フランスは慢性的に若年失業率が高く、とても学生にまで仕事がまわらないのが実情である。パリの町にもファストフードやカフェ、レストランはたくさんあるものの、そこに雇われているのは正社員がほとんど。以前よりふえてはいるが、飲食産業で学生のパートやアルバイトの募集は少ない。アルバイト収入がないから、フランスの大学生は出費を切り詰めるしかない。

小さくなっていたユウスケ君が、日本人の私にポツリともらした。

「なんといわれても仕方がないけど、日本とフランスはちがいますよ。実家の両親はボクに、アルバイトをして苦学しろとは望んでいませんから。親ができることはするから、しっかり勉強してから日本に帰ってこいといってます。フランスに滞在している間に、イタリアやスイス、スペインやポルトガルを旅行して、いいものを学んでこいと応援してくれます。

フランス人にこんな話をすると、まるでボクがソニーやホンダのような大会社の御曹司のように誤解されますが、ボクの仕送りは少ないほうです。なんどかカトリーヌの実家にいってますが、彼女の両親は娘に援助をする気はまったくないですよ。娘がパリで働いていても学生でも、そのちがいに無関心のような気がします。それに、彼女の家には、経済的な余裕がないですよ」

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フランス人は自立できなくても「自活」する

フランスでも親に経済的な余裕があったら、パリで学生をしている息子や娘が実家に戻れば、実家を往復する交通費くらいはお小遣いとして与えるにちがいない。お小遣いにしろ、あるとないとでは雲泥の差だ。だがそれは、子供が大学生のうちだけなのはまちがいない。社会人になった娘や息子に助け舟をだしたら、それこそわが子を冒涜することになる。

ちなみにフランスに「ひきこもり」とか「落ちこぼれ」がいないわけではないが、「自立」はともかく「自活」する。そもそも、「ひきこもって親と一緒に飯を食いたくないならトットと出て行け、ここはお前のウチじゃないんだから」とバシッであろう。

フランスではそもそも私大がないので、中学生の段階で勉強をしない子どもは大学まで到達できない仕組みでもある。ただ、もちろんうまくいかないことはある。10年に一度ぐらいの割合で<イエロー・ジャケット>騒動が勃発する。マクロン大統領のついてなさに、政財界は同情しているようだ。

いずれにせよ、孫の私立小学校の入学金を祖父母が出すこともあるという話をカトリーヌが聞いたら、彼女の思考回路はまちがいなくパンクする。


 

日本が大好きだから、そしてフランスも大好きだから、そのいい所を思う存分真似したら、もっと幸せになるんじゃない? 底抜けに明るく優しく、かつ鋭い視点をもつ吉村葉子さんが20年間のフランス生活を振り返ってまとめたエッセイ集。考え方ひとつで不幸だと思っていたことも幸せになるし、人生は楽しくなる! その中から厳選したエッセイを特別に今後も限定公開予定。お楽しみに!