ユウスケ君とカトリーヌは東京で出会った。ユウスケ君が大学院の2年生のときに、日本文学を専攻していたカトリーヌが、ユウスケ君の通う日本の大学に給費留学生として入ってきたのである。カトリーヌは一年間の留学を終え、フランスに戻りパリの大学院に進み、そこに今度はユウスケ君がやってきたのだった。

フランス人は母国では幼稚園から大学まで、教育費ダダが原則ではある。私立大学はないから、行けない子は大学に行かず、手に職をつける。しかし大学がある都会で自活するのはキツイ。写真はパリのソルボンヌ大学 Photo by Getty Images

フランスにも給費留学制度はあるし、優秀なユウスケ君も一応、フランス政府の交換留学生試験をパスしていた。ところが日本人留学生には、フランス政府から金銭的なバックアップはなくなっている。

経済大国になった日本からの留学生には現金給付がうちきられてしまったのである。フランスに留学している日本人学生については、親の収入を思えばフランス政府が薄きに厚くと計らったのだから、いちがいに不平等をなじることはできない。金銭感覚に敏感なフランス人が、ましてや国民の税金でまかなわれている給付制度だから、豊かな日本を考慮したとして当然だ。発展途上国からパリに留学にきている若者たちは、貧しい本国の親たちからの仕送りは期待できない。フランス政府からの給付金だけで生活している外国人留学生の生活を知れば、日本人学生への給費がカットされても仕方がない。

ただし、給費留学生の公的な奨学金はカットされているけれど、住宅手当や生活保護費という名目で申請が受理されて、公的援助が受けられる場合が皆無ではない。ただし、ビザの申請が難しくなっている昨今は、可能性がかぎりなくゼロに近いのが実情なのだけれど。

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ユウスケ君はうつむいたまま、カトリーヌに責められっぱなしだった。彼もカトリーヌはえらいと素直に認めている。6万円相当の奨学金で、屋根裏部屋の家賃と電気代をまかなっている。週に3日、パリに住んでいる駐在員家庭の子供たちの家庭教師をして得た5万円が、食費や交通費、旅行の費用や交際費に充てられる。カトリーヌがいうには、彼女は日本語を話せるから、ほかの学生よりもずっと恵まれているそうだ。日本人の子供たちの家庭教師という、楽で効率のいいアルバイト先があるからだ。アルバイト先の日本人家庭で食べる、豪華な和食も嬉しいと、彼女はいっていた。