20年間住んだパリから日本に帰国しているエッセイストの吉村葉子さん。37万部を超えた『お金がなくても平気なフランス人、お金があっても不安な日本人』は、長くパリに住み、そして長く日本にも住んでいるからこその「生きるヒント」が散りばめられているエッセイだ。

そこからオンラインで初めてご紹介するエッセイの第9回は、「ケチ」と言われるフランス人が子どもに与えるお金の話だ。昨今、社会人になっても親のお金に支えられていた20代、30代による様々なニュースが流れている。「自立」とは何か、「親が支える」とはどういうことかを考えさせられる。

フランス人の場合は、かなりのスパルタが待っていた。

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スキンシップの甘やかしはしても
金銭面の甘やかしはしない

子離れ、親離れという言葉がわが国にはある。ところがフランスでは、はじめから親子の癒着がない。それでもフランスのお年寄りにいわせると、最近の親は子供を甘やかしすぎるという。昔の親子関係は、もっとクールだったそうだ。

団塊の世代といわれる、現在70代半ばの親たちのいいぶんが面白い。あまり親から突き放されて育ったせいで、親の愛情に飢えてしまったから、いつも人恋しい。自分たちは子供にもっと愛情を注ぎたいと。中には児童教育における、日本的なスキンシップの効用を強調する学者さえいる。といっても、金銭面での甘やかしはない。両親や義父母の援助は無用、夫婦やカップルが助け合えばいいのだから。

少しぐらい無理をしてでも、子供が望むことをさせてやりたいと願うのは、親としてごく自然のことだと日本人の私たちは思う。子供にしても、自分がこんなに一生懸命努力しているのだから、親も喜んで援助してくれるにちがいないと。

ところが、そんな親子の協力関係は、フランスにはない。それは彼らお得意の個人主義が徹底しているからではなく、経済的な独立こそ大人の証にほかならないからだ。選挙権が与えられるのがフランスでは18歳だから、それを機に成人とみなされる。まだ大学生だから親がかりでも仕方がないという、エクスキューズは通用しないのである。そういえば日本も今は選挙権が与えられるのは18歳だ。

フランスでは親子の情愛とはちがう次元で、子供も18歳になれば金銭的に自立しなければならない。そんなフランス人にしてみれば、日本の親子関係がなんとも生ぬるいものに見えるにちがいない。

日本人ボーイフレンドの金銭感覚が許せない

高校を卒業して大学に入ったら、親からお金はいっさいもらわないと頑張っているカトリーヌにとって、日本人のボーイフレンドのイージーな金銭感覚が許せない。

スペインよりのピレネー地方からパリ大学に入り、奨学金とささやかなアルバイト収入だけでやりくりしているカトリーヌ。かたやボーイフレンドのユウスケ君には、日本から毎月1000ユーロ(約12万円)の仕送りが届く。日本人のユウスケ君には奨学金がないから、親からの生活費の仕送りはカトリーヌも認めないわけではないが、ことあるごとに福島の実家に国際電話で追加の送金を頼むユウスケ君のやりかたが気に入らない。

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「どうしてユウスケは親にお金をもらおうとするの? 日本人はみんなそうだと彼はいうけど、そんなはずないでしょ。どうして実家のお母さんは、ユウスケのいいなりに送金するの。奨学金がもらえないから、仕送りは仕方がないと思うけれど。私はパリにきてから一度も、ピレネーの母にお金をもらっていません。私だけでなく、友達はだれも親の助けをあてになんかしてない