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朝日とNHK的潮流に抗った「反大勢」オピニオン誌はなぜ消えたのか

文春の元名物編集者の毒

強烈な毒

『諸君!』のための弁明: 僕が文藝春秋でしたこと、考えたこと」は、文藝春秋が発行していたオピニオン誌『諸君!』(2009年6月号で休刊)の名編集長だった仙頭寿顕氏によるユニークな回想録だ。

この種の本は、自慢話を中心にした毒にも薬にもならない内容のものが多いが、本書はかなり強烈な毒を含んでいる。文藝春秋の内部事情、人的確執や路線闘争、また、編集者が作家について内輪でどのような話をしていたかが曝露されている点も興味深い。編集者と機微に触れる事柄を話すときは、その内容が外部に出ることがあると作家に警告してくれる貴重な作品だ。

 

評者にとって興味深いのは、仙頭氏の思想的履歴だ。仙頭氏は1959年生まれ、評者は'60年生まれなので、同時代人だ。高校生の頃に政治に強く関心を持ったという点でも共通している。

われわれより5~8年前に生まれた人々は、'70年前後に高校生活を送っている。当時の大学紛争の煽りを受けて、高校生の政治意識もかなり昂揚していた。しかし、われわれが高校生の頃、学生運動は停滞し、新左翼の諸党派は、内ゲバを繰り返していた。また、保守的な政治運動に関心を示す大学生、高校生は圧倒的少数派だった。そのような状況で、政治に関心を持つ高校生はクラスでかなり浮き上がっていたはずだ。

評者は、新左翼と社会党に、仙頭氏は民社党に魅せられていく。仙頭氏は、〈人との出会いは、ちょっとした偶然、ボタンの掛け方、掛け違いで、いろんな局面が生まれ消えていく。なるようにしかならない〉と述べるが、評者も認識を共有する。同じ世代であっても、どういう人と出会い、影響を受けるかで人生はかなり異なってくる。