ピグミー族の村ンジャンゲで過ごした2週間は楽しく、刺激的なものだった。
村の子どもたちと森を散策して遊んだり、水汲みなどの手伝いをしたり、栄養不足に陥りながらも気力を振り絞って木に登りマンゴーを採ったりして過ごしていて、村長の息子、ジャンゴとも日を追うごとにどんどん仲良くなっていった。
一人は地上、一人は木の上という風に協力してマンゴーを探すことで袋一杯のマンゴーを集めたこともあったし、しつこいぐらい追いかけてくる蜂から身を隠しつつ二人でこっそり蜂蜜を食べたこともあった。
一緒にフランス語を勉強したり、昼寝をしたり、夢を語り合ったりもした。
ちなみに、ジャンゴの夢は日本のような先進国で働くことだそうだ。
これに関してはジャンゴだけでなく、他の子どもたちや大人たちの多くが、ピグミーの村から出て都市部で働くことを夢見ているようだった。
しかし、ンジャンゲやその周りのピグミー族の村では、先進国はもちろんのこと村を出て働くことに成功した者はまだいないようだった。
元々、ピグミー族の人々は数十年前までは文明的な暮らしがしたいとは考えず、森の奥深くで暮らしていた。バンツー族がピグミー族を森の入り口付近に無理やり住ませようとした時も、最初は反発して森の奥へ逃げる者が多かったらしい。
その後、バンツー族の管理下に置かれてからは、紙幣や文明に触れたことで、彼らはより便利で豊かな暮らしに憧れるようになったようだ。
しかし憧れこそするものの、電気のない環境下で情報や教育が不十分であるため、どうすれば村の外で働けるのかは誰も分からないようだった。
そしておれがバンツー族の人々に確認を取ったところ、ピグミー族の人々が村の外で働いてはいけないというような不文律は無いとのことだったし、若者の中には肉体労働で得た金でボロボロのバイクを買い遠出している者もいるようだったので、雇い主との交渉さえ上手くいけば村の外でも働けるようだった。
世話になったジャンゴやンジャンゲの人たちの為に何かできることはないだろうか……と考えながら、おれは残り少ない日々を過ごした。