「高齢者の運転はすべて危険」は本当か

先日の池袋の事故をきっかけに、高齢者の運転を許さないムードがますます高まっています。確かに、体を自由に動かせない高齢者や、認知症の患者さんが、ハンドルやアクセルを操作していると思うと、なんとも恐ろしい。けれど、近日の報道のされ方やSNSを見ていると、まるで高齢者「だけ」が危険な運転をしているかのように感じませんか

こちらについても、警察庁交通局による『平成29年中の交通事故の発生状況』を例に、データで検証してみましょう。

免許保有者10万人あたりの交通事故件数を年齢層別に見てみると、最も交通事故を起こしている年齢層、それはなんと16〜19歳の未成年たちです。次いで交通事故を起こしている年齢層が、20〜29歳。先日の池袋の事故で運転していた男性のような80歳以上は、全体の3番目に交通事故を起こしている年齢層ではあるものの、その数は未成年が起こしている交通事故の半分にも達していません。

確かに、高齢者の運転は事故につながりやすいかもしれない。認知症の患者さんに運転させないようにするには、無理矢理にでも車のキーを隠してしまわないといけないと聞きます。「まだまだ運転できる!」という高齢者に免許を返納させようと、苦労されている周囲の方が多いであろうとも想像できます。

けれど統計を見てみれば、運転経験の浅い10代、20代の若者たちの方が、高齢者よりも交通事故を多く起こしているということは、誰もが知っておいたほうがいい事実です。

さらに、内閣府による『高齢者及び高齢者以外の交通事故死者数の推移』によれば、2012年以降、交通事故で亡くなっている人の半数以上が65歳以上の高齢者という状況が続いています。2017年では、年間の交通事故死者数の実に54.7%が高齢者。交通事故では、若者よりも高齢者の方が毎年たくさん亡くなっているということです。

ニュースは、真実の側面しか伝えない

こうしてデータを辿ってみると、ニュースから流れてくるだけの情報と社会の実情にギャップが感じられると思います。我が国は高齢化にともなって、今後も高齢者が運転事故を起こさないための対策が必要です。しかし、このような交通事故の実態を俯瞰した上で伝えてくれるメディアが少ないように思えてなりません。

例えば、Yahoo!ニュースで「高齢者 交通事故」と検索してみると、約413件がヒット。対して、「若者 交通事故」では約110件、「未成年 交通事故」では約18件と、その差は大きく開いています(2019年6月25日時点)。

高齢者による運転事故をピックアップしたニュースが数件続けば、まるで高齢者だけが運転事故を起こしているように見えてしまう。特に、若者が犠牲になった事故が報道されれば、高齢者ばかりが悪者のように思えてしまう。高齢者が被害者となった悲惨な交通事故だってたくさん起こっているにもかかわらず。

ニュースは、最近起こった事故や事件を、わずかに切り取ってしか伝えてくれません。それは、日本全国各地で日々様々な問題が起こっている社会の、ほんの一部分でしかない。ニュースで見たこと、自分の身の回りで起こっていることだけが社会の姿ではありません。

「もう高齢者に一切運転させるな!」

そう発言するのは簡単なこと。けれど、都市部ならまだしも、地方には運転免許がなければ生活できない人たちがたくさんいることも事実です。運転させないのならば、運転しなくてもいいような生活を考える必要もある。ニュースを多角的に考えて、もっと建設的な議論をしたほうがいいと思うのです。