こういった妻への仕打ちが外部に漏れるとまずいと思ったのか、その後、教授から「(助教について)彼は未熟だと思っている云々」という3ページに渡る謝罪文が妻に送られてきた。私は「今更」すぎるその文言に怒りを覚えた。

「女性が出産でキャリアを諦める」という話が一般的にあることは知っていたが、その裏にある職場側の問題を、妻のこの体験を通して、この上なく強く痛感させられた。

女性の研究者の割合が欧米の半分以下

妻が味わった苦しみから察せられるように、日本の研究業界は古い価値観に縛られており、ハラスメントの温床と言っても過言ではない。そんな環境であるためか、女性の研究者は少ない。

世界的に見ても、日本のその傾向は突出している。文科省が平成29年に作成した資料(「平成29年度ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ公募説明会」の際に作成されたもの)によると、女性の研究者の割合は、イギリスで35.4%、アメリカで34.3%であるなか、日本は15.3%と半分以下で、韓国の18.9%よりも少ない。

また、同資料によると、博士課程進学者における女性の割合はおよそ30%、研究者ではおよそ15%、教授職より上位職ではおよそ10%とキャリアが進むにしたがって割合が下がる傾向になっている。

女性研究者はなぜここまで少ないのか。男女共同参画学協会が平成24年度に実施したアンケートによると、以下が女性研究者が少ない理由トップ3となっている。

「家庭との両立の難しさ」
「育児期間からの復帰の難しさ」
「職場環境」

これらを見て、「よくある」理由だと感じる人もいるだろう。妻もかたちだけ見ると、確かにこれらの理由で研究者のキャリアを諦めた。しかし、これらの理由の裏には多くの場合、「よくある」で片付けてはならない、それぞれの苦悩が隠れている。