私は自然科学を専門とする研究をしており、共働きの妻と2人の子供、そして猫1匹と共に、オーストリアに住んでいる。

妻も同じく自然科学系の研究で博士号を取得しているが、ある理由から、研究者としての道には進まずにまったく別の仕事をしている。このことについては追って詳しく述べたいと思う。

まずは、twitterに投稿したら大きな反響があった、妻が体験したある出来事について紹介したい。

「Dr.で間違いないでしょうか」

それは数カ月前に、妻が下の子を連れて仕事で日本に帰ったときのこと。仕事を終えてオーストリアに戻る際、日本の空港のチェックインカウンターで「(チケットに)Dr.と表示されていますが間違いないでしょうか」と質問されたのだ。

なぜ、その航空会社の人はそんな質問をしたのか。

欧州の多くの国でそうであるように、私たち家族が生活するオーストリアでも、性別に関係なく個人のキャリアに対する尊重は大きい。それは博士号についても同様で、例えば妻は現在、オーストリアにおける滞在許可の申請時に博士号の証明書を提出することで、研究職に限らず現地の人と同様に自由に就職や商売などビジネス活動を行える種類の滞在許可を得ている。

つまり博士号を取得しているという信頼から滞在許可を得て、現地で仕事をして暮らしているのだ。そういった人はヨーロッパでは少なくなく、病院でもどこでも「Dr.」の敬称は広く使われている。飛行機に乗る際も同様で、今回使用した航空会社でもチケット購入時に「Mr.」や「Mrs.」以外に「Mr. Dr.」や「Mrs. Dr.」といった具合に敬称を選択できるようになっているので、妻はいつものように「Mrs. Dr.」を選択してチケットを購入した。

日本の空港であるとはいえ、パスポートと滞在許可証を見せているので、オーストリア在住であること、また飛行機に慣れていることは伝わっていた。