今後の日本で「賃金が際限なく下がる」と考えられるこれだけの理由

雇用制度改革が暗示する未来
加谷 珪一 プロフィール

退職金が消滅

定年が70歳まで延長されれば、これは事実上の生涯労働といってよく、そうなると高額の退職金を支払う意味がなくなってしまう。

厚生労働省の調査によると2017年に大卒の定年退職者に企業が支払った退職金の平均額は1788万円となっており、5年前との比較で153万円減少した。20年前との比較ではなんと1083万円も減っている。事実上、退職金は消滅に向けて動き出したといってよい。

退職金は定年とセットになったものであり、定年制度が崩壊しつつある今、企業にとっては退職金を支払うメリットがなくなっている。退職金の支払いを前提したライフプランは、今後は成立しないと考えた方がよいだろう。

 

残業規制は「生産性の低い企業」に大打撃

雇用に関する変化は、働く年月についてだけではない。これからは日々の働き方も大きく変わる。今年の4月から働き方改革関連法が施行され、残業時間に厳しい上限規制が設けられた。一連の制度改正は、多くの会社員に根本的な価値観の転換を迫ることになる。

日本において無制限の残業が認められてきたのは、終身雇用と年功序列の制度があったからである。雇用と賃金を保障する代わりに滅私奉公的な働き方を社員に求めてきた。一連の制度は、昭和の時代においてはうまく機能したが、今では生産性を引き下げる元凶となっている。

残業規制の導入は、企業の優劣を鮮明にする効果をもたらすだろう。

一部の企業では、残業規制の導入後、一律に残業時間を削減するという場当たり的な対応を行っている。業務のムダを見直さず、ただ労働時間だけを削減した場合、企業の生産量は確実に減るので、売上高と利益の減少につながる。生産性が上がらないと賃金も上げられないので、社員の年収がさらに下がるという悪循環に陥る。生産性の向上を実現できず、市場退出を迫られる企業が出てくるかもしれない。