「亭主関白」と自分を言い聞かせていたが

怒りっぽく扱いにくいけれど、夫として決定的に悪いところがあるわけではなく、父親として子どもの世話はむしろ積極的にした。たしかに、2人の子どもがいながら無理に離婚するほどではない。

平日は共働き夫婦として忙しく過ごし、休日は家族4人でレジャーなどに出かけた。子どもの前でも早苗さんのことを怒鳴るので、すっかり心は離れてしまっていたが、亭主関白タイプ、と思えば耐えられないほどでもないと思った。が、あるとき自分の本音に気づいて愕然とした。

「保育園のママ友が『あんたの旦那、変やな、死ねばいいのにな』って言ったんです。関西弁で、きついジョークのノリだったから私も『ほんまやな』って答えた。でも、そのとき、そうか、離婚しないんだったら死別しか離れる方法はないんだな、ってガッカリしている自分がいたんです」 

夫のことを「死ねばいいのに」と思っている妻。妻に「死ねばいいのに」と思われている夫。どちらも不幸だ、と思った。こんな結婚生活を続けていいのか。

離婚した旧友がうらやましい

その年の正月。旧友からの年賀状に「離婚しました」とあった。思わず「いいなあ」と声に出た。――こんなのよくない、夫婦として終わってる。

浮気も借金もギャンブルも暴力もないんだから我慢しろ、と言うのなら逆に、何があればいいのかな、と思い、初めて携帯を覗いたんです。そうしたら浮気はなかったけれど、出張中のキャバ嬢とのやりとりがあった。全然大したことじゃなかったけど、女遊びをしてる! って大げさに言いたてて。カーッとなるタイプだとわかっていたので、そのタイミングで離婚届を出したら『書けばいいんだろ』って。書類は出来上がりました」

旧友からの「離婚しました」の知らせに「うらやましい」と思ってしまった自分。本音とようやく向き合った Photo by iStock

元夫としては、まさか本当に離婚されるとは思ってもいなかっただろう。でも、早苗さんの行動は早かった。喧嘩をしたのが2月。3月にはアパートを契約し、4月、子どもの小学校入学に合わせて家を出て行った。アパートの初期費用も引っ越し代も自分の貯金から出した。こういうとき、正社員で働いているのは強い。どんどん事を進めていく妻を、元夫は半ば呆然と見ていた。

「おっとりしていた妻が、って驚いたと思います……。子どもとは離れたくなかったみたいでその後、親権変更の裁判も起こされましたが、私が勝ちました。その後、養育費は1人3万ずつで6万円、面会交流は元夫が会いたいときにいつでも、と決まり、それはお互いに守っています」

こういうと万々歳の勝利のようだが、お金の面については早苗さんが痛みを負った。

家は共有名義でローンも半々で組んでいたので、離婚後も私の分の支払いが続いたんです。新しく借りた部屋代もかかるわけですから、貯金をどんどん切り崩して、ほぼ無一文になりました。結局、名義はあちらに渡すことにし、それでローンは払わなくてよくなったけれど、今まで払い続けてきた分は失いました。――でも、そうまでしてでも、元夫とは離れたかったんです」