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グレートジャーニーの探検家が血肉にした「本で冒険する」ということ

関野吉晴さんの「人生最高の10冊」

マゼランに魅了された

私は探検家ですが、今回の選書でもさまざまな世界に分け入っていくような、探究心に満ちた作品が中心となりました。

まずは『マゼラン』。16世紀に世界で初めて、世界一周を成し遂げた人物の伝記小説です。作者のシュテファン・ツヴァイクは多くの伝記小説を書きましたが、どの作品でも、出だしでまず惹きつけられます。

本作の冒頭は、現代とは比較にならないような設備の乏しい船で旅立ったマゼランが、いかに凄いかということが書かれています。その語り口は名人芸に近く、思わず読み続けたくなってしまうほど。

 

実はマゼラン自身は旅の途中で殺されてしまい、出発地のスペインに帰着したのは彼の部下たちです。それでも、やはり彼の冒険心があったからこそ、偉業が達成されたのです。私自身も、マゼランという人物に存分に魅了されました。

人間はどこまでチンパンジーか?』は、人間が進化してきた過程や、人間特有の性質について探究した学術書です。

ジャレド・ダイアモンドは進化生物学者で、文献よりも実践を重視しています。ニューギニアなどでフィールドワークを行い、細かな観察をした上で論を展開してきた人なので、内容には確かな説得力があります。

後半では動物の絶滅についても語られますが、特に興味深いのは、絶滅の波及効果です。例えば、パナマでは大型の肉食動物が絶滅した結果、なぜかアリドリという鳥が絶滅しました。天敵がいなくなったことで猪やヤマネコが急増し、食物連鎖で下位にいた鳥類が食べ尽くされてしまったのです。

鳥とは言わずとも、小さな虫くらいなら滅んでもいいという人はいるかもしれません。しかし、生物同士がどのようにつながっているかは現在でもはっきりとわからず、虫1種の絶滅でも、甚大な悪影響がもたらされるかもしれないんです。生物や進化について、まだまだ世界には多くの未知が存在することを改めて実感しました。