労働法がなくなる日〜だから日本人は「自助力」を磨かなればならない

老後2000万円問題が突きつけた現実
大内 伸哉 プロフィール

生産の現場で起こる「本質的変化」

こうして現在、労働法は「働き方改革」の波にも乗って、ちょっとしたブームだ。

しかし、それは長続きしないだろう。生産の現場では、本質的な変化が起きているからだ。

第4次産業革命は、雇用の創出もあるが、雇用の喪失も引き起こす。工場の無人化は既に広がっているし、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やAIの活用は、オフィスの省人化を進めるだろう。

いなくなるのは単純業務の非正社員だけではなく、生産性の低い正社員も同じだ。ルーティンワークしかしていない多くの正社員は、機械との競争に勝てないからだ。仕事がなければ、労働法も無力だ。

もちろん、人間がやる仕事がなくなるわけではない。AIやロボットを活用するのに必要な人材の不足は深刻だ。さらにAIやロボットによって代替できない能力もある。

なかでも重要なのが、新たな発想で価値を生み出す創造力だ。いま求められる人材は、創造への貪欲な姿勢をもち、スキルは自分で磨きプロを目指すという企業家精神をもつ者だ。

こうした人材を、企業がこれまで重用してきた、指揮命令に従順な社員の中から見つけ出すのは困難だろう。彼ら/彼女らは、これまでの日本企業の枠におさまらないし、そもそも企業に雇用されることを望まない可能性も高い。

ICTの発達は、こうした企業から独立した働き方を促進し、5G時代の到来がそれに拍車をかけるだろう。

かつての工場労働のような多くの労働者が集まりやっていた仕事は、機械で代替できる。機械で代替できない創造的な知的貢献は、ネットでつながっていれば、いつ、どこででも可能となる。

これは、時間的にも場所的にも自由な働き方だ。しかも上司の監視はなく、組織の歯車から解放されるので、仕事は自己実現の場となりやすい。

もちろん、自由になることで失うものもある。それは手厚い庇護だ。独立して働く者には、庇護を与える雇用主はいないし、雇用されずに働く者に、労働法による庇護は適用されない。

 

「身分から契約へ」の再来

新しい個人の働き方は、「身分から契約へ」の再来だ。そこに労働法の誕生時と同じ状況をみる人もいる。

確かに、クラウドワークやギグエコノミーの現状をみると、それも理解できないではない。

とくに単純労働に従事する低スキルの者であれば、発注企業やレイバー・プラットフォーマーとの間に「契約を通した身分の設定」があるとして、そうした企業に庇護を義務づける発想が出てきても不思議ではない。