〔PHOTO〕iStock

労働法がなくなる日〜だから日本人は「自助力」を磨かなればならない

老後2000万円問題が突きつけた現実

労働法の存在意義を考える

昭和の高度経済成長期の日本では、労働法の重要性はそれほど高くなかった。

正社員は企業への忠誠を求められ、ときにはそれが過労による健康障害をもたらしたが、終身雇用と年功型賃金という手厚い保障がこれを補って余りあった。

非正社員には、こうした保障はなかったが、その多くは主婦パートや学生アルバイトであり生計維持者ではなかったので、格差が社会問題となることはなかった。

 

ところが平成に入り、バブル経済が崩壊し、終身雇用が幻想だったことが顕在化する。

失業率が上昇し、平成の真ん中の2002年には5.4%に達した(それでも先進諸国間では低い水準だが)。リストラされた正社員の中には、非正社員に転落する者も出た。

一方、経営環境が厳しくなった企業には、正社員を増やす余裕はなく、リーマンショックがそれに追い打ちをかけた。非正社員率の上昇に歯止めがかからなくなった。

〔PHOTO〕iStock

このような状況下で、労働法の存在意義は再び意識されるようになった。

政府が2007年以降、政権の違いに関係なく取り組んだのは、非正社員の保護のための規制強化だった(最低賃金の引上げ、正社員と非正社員の間の処遇格差の是正、有期の非正社員の無期転換、派遣社員の直用化など)。

労働法の歴史

ところで、労働法の歴史は、西欧で第1次産業革命により工業社会が到来したときに始まる。

それ以前の農業社会では、農民は領主と身分的な関係にあり、その自由は制約されていたが、一方で領主は農民を庇護する責務を負っていた。手工業のギルドにおける親方と職人・徒弟との間にも、同様の身分関係があった。

当時の身分関係は、支配はするが庇護もするという相互的なものだったのだ。