「気球」に乗ってどこまでも──。ブラックホールも観測します!

望遠鏡でも天文台でもない、新しい観測
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便利で手軽、しかも安価な「気球観測」

天体観測と聞いて思い浮かべるのは、きっと天文台の望遠鏡や人工衛星だろう。ところが、高橋さんらの研究では気球を使う。気球に観測装置を積んで、空に揚げるのだ。

気球を使う利点は、大きく分けて二つある。一つは宇宙からのエックス線や硬エックス線を吸収してしまう地球大気の上に出ることができること。もう一つは、安くて臨機応変に改良できることだ。

PoGO+の気球実験で観測機器を搭載したゴンドラ
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エックス線や硬エックス線は、地球の大気に吸収されるので地上には届きにくい。エックス線は上空100キロメートル、硬エックス線は上空40キロメートルより高いところで観測しなければならない。

そのための観測手段としてロケットや人工衛星があるが、これらはそう簡単に使えるものではない。長期にわたる開発期間と多額の費用が必要な人工衛星では、確立された手堅い観測手法の機器を搭載することが求められる。したがって、いま開発途上にある硬エックス線偏光の観測装置を載せることは難しい。

しかも、観測装置は大きく重いので、低予算で開発できる小型人工衛星には搭載できない。ロケットに観測機器を積んで打ち上げ、落ちてくるまでの間に観測を行うという方法もあるが、これだと実質的には数分間しか観測できない。

それに比べて、気球は長時間にわたって観測を継続できるだけでなく、観測した結果をすぐに反映して装置を改良し、引き続き行う次の観測に生かせる身軽さもある。さらに、気球だと数トンの装置を積むことができるため、小型化、軽量化へのしばりも緩い。

2016年と2018年の観測では、南極やスウェーデンといった極域で1週間以上の観測を行った。観測を終えた気球は地上に降りてくるので、人がいない広く開けた場所が必要だ。国土の狭い日本でやろうとすると、飛行時間はせいぜい1日。必要とされる1週間以上の飛行はできない。