Photo by gettyimages

「気球」に乗ってどこまでも──。ブラックホールも観測します!

望遠鏡でも天文台でもない、新しい観測
天文台でも、望遠鏡でもない──。そんな新しい天体観測の方法が現れています。それは「気球」を使った観測。地球から7200光年離れた「かに星雲」を気球を使って観測することで、ブラックホールの正体に迫ることもできるといいます。どうやって「気球」を使って観測するのでしょうか?

宇宙旅行、火星への移住計画──。そんな夢のような宇宙の話をよく耳にする。「ブラックホールの写真が撮影された」というニュースを耳にした方も多いのではないだろうか。

宇宙が身近になり、謎の多くが解明されたように感じるが、じつは、わかっていないこともまだまだ多い。

ブラックホールの性質も、残された大きな謎のひとつだ。ブラックホールが太陽などよりはるかに高いエネルギーを放出している理由、ブラックホールの構造の中でどれくらいの質量(重さ)の天体がどんなスピードで動いているかもよくわかっていない。その解明の鍵を握ると考えられているのが、大きなエネルギーを出しながら激しい活動を続けている天体の観測だ。

広島大学などの研究グループはこれまでに「ブラックホール連星」の硬エックス線偏光の観測に成功しており、2018年末には気球に積んだ観測装置で中性子星からの硬エックス線偏光を観測することに成功した。

激しい天体現象から多く放出される硬エックス線を観測するこの計画が順調に進めば、ブラックホールの謎の解明に大きく近づけるかもしれない。

「かに星雲」がブラックホールの謎のヒントとなる

広島大学の高橋弘充(たかはし ひろみつ)助教らがターゲットにしている天体は「かに星雲」。重い星は、その最期を迎えるとき「超新星爆発」と呼ばれる大爆発を起こす。かに星雲は、1054年に起きた超新星爆発のその後の姿。

米航空宇宙局のチャンドラ衛星がとらえた「かに星雲」の画像
拡大画像表示

新古今和歌集を編んだ藤原定家の日記「明月記」にも、過去の記録を引く形で、その出現が記されている。かに星雲の中心には、0.033秒で1回転している「中性子星」という小さくて重い星があり、強い電磁波が放出されている。激しい活動をしている天体のひとつだ。

かに星雲は、私たちの目に見えている光、つまり「可視光」だけでなく、電波、赤外線、エックス線、ガンマ線というさまざまな種類の光を出している。

光の波長とエネルギーの関係。硬エックス線は、エックス線とガンマ線の間のエネルギーを持つ 拡大画像表示

これらは「電磁波」と総称される光の仲間だ。いずれも波として振動しながら空間を伝わり、1秒間に振動する回数、すなわち振動数の違いで分類されている。振動数が高いほど、その電磁波のエネルギーも高い。

活動している天体は、その特徴に応じていろいろな電磁波を出している。表面温度が6000度くらいの太陽は、おもに可視光を出している。活動が激しくて温度が1000万度以上になるような天体は、エネルギーが高いエックス線をさかんに放出する。

エックス線や、それよりややエネルギーが高い硬エックス線には、物を突き抜ける(透過する)性質があるため、観測が難しい。そのため、可視光に比べると観測手法の研究があまり進んでいない。

だがこれは、そこにはまだ宇宙の謎を解く鍵がたくさん眠っているということでもある。

観察のカギは「偏光」

いま高橋さんらが取り組んでいるのは、硬エックス線の観測だ。エックス線より大気に吸収されにくく、観測しやすいからだ。その硬エックス線の「偏光」をとらえようとしているのだ。