開発者が明かした、イグノーベル賞「スピーチジャマー」の誕生秘話

発明=課題解決? そんな単純じゃない
「人を笑わせ、そして考えさせる研究」に贈られるイグノーベル賞。本家ノーベル賞のパロディ的存在ながら、数多くの日本人科学者が受賞してきたニッポンのお家芸でもある。2012年、イグノーベル賞を受賞した栗原一貴先生が、この度、科学者支援サービス『ブルーバックスアウトリーチ』に参戦! それを記念して、開発者自ら、SpeechJammer(スピーチジャマー)誕生のきっかけを紹介してくれた。
2012年、イグ・ノーベル賞を受賞した栗原一貴氏(左)と塚田浩二氏

2012年9月、私は相棒の塚田浩二さん(はこだて未来大学准教授)とともにアメリカのマサチューセッツ州、ハーバード大学で開催された式典において、「人を笑わせ、そして考えさせる研究」に授与される、世にも珍妙な国際的学術賞「イグノーベル賞」を受賞しました。「おしゃべりが過ぎる人を邪魔する銃『SpeechJammer』の発明」に対する受賞です。

この受賞で、私はマッドサイエンティストとしてのお墨付きを与えてもらったように思い、その後の私の研究者としての方向性も決定づけられました。もうだいぶ前の出来事ではありますが、当時を思い返し、発明に至った経緯などを改めて述べてみたいと思います。

これから3つのSpeechJammer開発秘話をご紹介します。その後に、なぜこのような複数のストーリーが現れるのかを種明かししたいと思います。

 

(1)プレゼンテーショントレーニングシステムとして

私は当時、「プレゼン先生」という情報システムの研究をしていました。プレゼンテーションの様子をビデオで撮影し、それをコンピュータで分析すると、話の速さや言いよどみの頻度、顔の向きなどを検出し、人間にダメ出しあるいは指導するというものでした。

しかし実際に使ってみると、人間にとって、話す速さを意識的にコントロールするのはとても難しいということがわかりました。ユーザーに話す速度をゆっくりにするよう促しても、音や視覚刺激を用いた方法では効果が得にくかったのです。

そこで、もうすこし強制的に話す速さに影響を与えられる仕組みはないだろうかと考え始めました。ちょうどその時期に日本科学未来館を訪れたとき、「自分の声をすこし遅れて聞くと話しにくくなるよ、不思議だね!」という展示を見て、「これは応用できる!」と思ったのです。

プレゼンテーションしている人に自身の声を少し遅らせて聞かせることで話しにくくさせる効果が期待できるため、話す速度を強制的に調節させることができるかもしれないと思ったのです。

そして生まれたのがSpeechJammerです。