「普通じゃない」

「何かヘンだな」と感じたのは、12月も半ばを過ぎた頃だった。
朝、いつものように勢いよく散歩に飛び出して行くリキだが、帰りの上り坂になると、何となく足取りが重くなるように思えたのだ。

「ちょっとおかしい」と思ったのは13歳になってからだった 写真提供/折原みと

でも、家に帰ってくると台所に直行して生ゴミをあさったり残り物をねだったりするのはあいかわらずだし、ごはんを見せると子犬の頃から変わらない「ごはんダンス」も踊ってくれる。

散歩の時に感じた違和感は、気のせいだったのだろうか?

年のせいで足腰が弱くなっているから、上り坂がキツくなっただけだろうか?
いつもと変わらず元気そうなリキの様子にホッとしながらも、心の片隅の小さな不安が拭えない。

「ちょっとおかしい?」「でも元気だし」

そんな不安と安心の間を行ったり来たり。
でも、何日かそうして様子を見ているうちに、異変は決定的なものになった。
散歩から帰ると、いつも一目散に台所に走って行くリキが、玄関で座り込んでしまったのだ。

おかしい。これはやっぱり普通じゃない。

その日はちょうどクリスマスイブだったが、翌日からは、リキを訓練士さんに預けて長野に行く予定になっていた。長野で行われる全日本フィギュアスケート選手権の観戦のためだ。
私は女子フィギュアの安藤美姫ちゃんのファンで、バンクーバー五輪の前に『安藤美姫物語──I believe』というドキュメンタリーコミックを描かせていただいていた。

その時取材でお世話になった美姫ちゃんのママが、なかなかチケットの取れない全日本フィギュアに招待してくださったので、2泊3日の予定で長野に行くのを楽しみにしていたのだ。

リキは、散歩の後に少しだけ疲れた様子で座りこんでいたけれど、その後はいつもと変わらない食欲だったし、元気もある。だけど明日から留守にすることもあって、念のために病院に連れて行くことにした。