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金価格「沸騰」が暗示する、アメリカ経済の先行きの危うさ

奇妙な数字の変化をどう読むか

6月19日、米FRB(連邦準備理事会)は金融政策の運営方針を大きく転換した。FRBは、忍耐強く金融政策の正常化を進める考えをあきらめ、年内にも利下げを行う考えを示した。想定よりも、FRBは緩和重視姿勢を鮮明にした。

今のところ、米国経済はそれなりに安定している。それにも拘わらず、FRBは政策変更の意図を明確にしたのである。その背景には、先行きの懸念が高まっていることがある。

利下げ期待の上昇から、米国の株価は大きく上昇した。新興国通貨も買い上げられ、一見するとリスクテイクが進んでいる。同時に、米国債も、金の価格も上昇している。

リスク資産の上昇と同時に金価格が上昇していることは冷静に考えるべきだ。なぜなら、金価格が上昇する場合、投資家が米国の政治・経済をはじめ、先行き不安を強めることが多いからだ。

 

金価格が急上昇する背景

金価格が5年ぶりに高値を更新した。これは、冷静に考えるべき変化だ。金の価値は安定している。金はさびない。これは、投資の対象としてとても大切な特徴だ。

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一方、金以外の資産の価値は変動する。世界の基軸通貨である“米ドル”の価値は、米国の政治・経済の状況に左右される。ドルの価値がどう変化するかが、金の価値を左右する。

ドルの為替レートは、財務省を中心とする米国政府の考え方に大きく左右される。基本的に、経済が好調である場合、米国はドルの上昇には比較的寛大だ。米財務省は多少のドル高には目をつむり、“ドル高は国益”と、寛大にふるまうことが多い。財政赤字と貿易赤字を抱える米国にとって、ドル高は経済を支えるために重要だからだ。

しかし、ひとたび景気が減速し始めると、米国はドル高が国益との主張を取り下げ、緩やかなドル安を重視する。

足許、米国の財務省は各国の通貨に対する監視を強めている。他の通貨に対してドルが下落基調で推移すると、世界の投資家はドル建ての資産からの利得を見込みづらくなる。米国は明確に、緩やかなドル安を重視している。

金は、ドル建てで取引される。金の価値(価格)が上昇する最も重要な理由は、その価値が高まるからではない。ドルの価値が落ちた結果として、金の価格が上昇するのである。足許の金融市場で金の価格が上昇しているのは、先行きの減価が見込まれるドルを手放し、価値が一定の金を保有して資産の価値を守ろうとする投資家が増えているからだ。

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