息子を不良少年に殺された母親が、苦しみと向き合い続けた22年間

同じ悲劇を繰り返させないために
松岡 久蔵 プロフィール

加害者を切り捨てるのではなく

近年の犯罪被害者支援をめぐる法制度は、聡至さんの事件当時からは比べようもないほど整備が進んだ。

2004年に犯罪被害者等基本法が制定され、05年には犯罪被害者等基本計画が策定、さらに07年には刑事訴訟法の改正で被害者の刑事手続への関与拡充が実現するに至った。

高松さんが当時、少年法を理由として加害少年らの審判を傍聴できなかったために、加害少年と家族を相手取って損害賠償請求の民事訴訟を起こさないといけなかったことからすれば、大きな進歩だ。

一方で近年、大きな犯罪事件が起きた際、その加害者が「引きこもり」と呼ばれる人々や精神病患者などだった場合、「怪しいやつは隔離しろ」などという排除の世論も目立ってきている。これらは少年事件ではないが、直近でも5月28日に川崎市で発生した20人殺傷事件、さらにそれに影響を受けたとされる元農水事務次官による息子殺害事件を受けて、そうした世論が噴出した。

 

しかし当然ながら、「引きこもり」や精神病患者は犯罪予備軍ではないし、ひとりひとりの背景に複雑な事情がある。もし加害者が犯行に及ぶ前に、医療や地域社会の仕組みがもっと機能していれば、結果は違っていたのかもしれない。

今回の取材で高松さんから伺った次の一言が胸を打つ。

「もし、加害者を『ダメな人らや』と切り捨ててしまったら、絶対に新しい不幸が起きる。少なくとも、努力で変えられるところはあるんやから、やれるだけのことはやらんとな」

誰にでも必要なときに頼るべき組織や人がいれば、そして他人を頼ることが恥ずかしくないような社会の雰囲気があれば、罪を犯す加害者も、それに苦しめられる被害者も減るのではないか――。

この古くて新しい問題と、高松さんが聡至さんとともに20年以上前から戦い続けてきたことに、改めて筆者は敬意を表したいと思う。

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