途上国とは根本的に異なる「問題の所在」

そのような経験を辿る中で、私は避妊具を含むSRHRサービスへのアクセスに関するセッションに数多く出席した。その中で感じたのは、「避妊具へのアクセス」といったときに現在世界一般的に想定される困難と、日本に横たわる問題は「根本的に違う」ということだ。

多くのセッションで交わされた問題は「デリバリー」の困難。つまり、本来であれば様々な避妊具が入手可能な価格で得られる状況ではあるが、医療機関が遠かったり、ストックが不足したりして、入手ができないのだ。この「デリバリー」に関する問題は幾度となく議論され、今後一層注力すべき分野として強調されていた。

では日本の抱える問題はといえば、それとは全く異質のものだ。デリバリー云々ではなく、そもそも女性にとってその使用が権利であるはずの薬に認可が下りない。それは今に始まったことではなく、1970年代には世界で使用されはじめていた低用量ピルも、日本で認可が下りたのは1999年、国連加盟国では最後の承認だった。

その承認も、女性の権利を実現するためというよりは、承認によって日本の面子を守ったような形だ。というのも、日本は1998年にできた男性の勃起不全治療薬バイアグラを半年という異例の早さで認可し、40年経っても避妊法としてのピルを認可しない姿勢に(経口避妊薬の完成は1955年だった)国内外から一気に批判の声が高まったからだ。

また、昨今議論されている緊急避妊薬のオンライン診療検討会を傍聴しても、本来、「緊急避妊のアクセスを制限する権利」は誰にもないはずなのに、むしろWHOは年齢問わず妊娠不安にあるすべての女性がアクセスできるべきという姿勢にも関わらず、検討委員のひとりで日本医師会副会長の今村聡氏は検討会で「(緊急避妊薬へのアクセスが)無制限に広がってしまうのも困るという思いがありま す。」といった発言をしている。

当然ながら、アクセスを制限された女性の方がよっぽど困る。しかし今村氏と同様の意見は政策決定者の中に少なくない。つまりは、いわゆるエスタブリッシュメントの変革を実現しない限り、日本でSRHRが実現されるとは考えにくいのである。

「アクセスの問題」といえど、日本の抱える種の問題はまだまだ議論されておらず、光を見出すことが大変難しいのが現状だ。

セッション会場外。世界中のアクティビストや政府・国際機関関係者で溢れていた 写真提供/福田和子

「このままでは取り残される」危機感

日本の状況は、疑問視どころか怒るくらいでもいいらしいということはお分かり頂けたであろうか。ただこれを変えたいと思ったときに、様々な壁にぶち当たる。世界からは「まさか先進国の日本がそんな状態にある」と思われないため、完全に見過ごされている現実。日本は経済的には上位にいるため、投資対象にはなりにくい現実。そしてなにより、日本人自身が自分たちの基本的な権利や選択肢が狭められていると気付きにくい現実。従って、声をあげる人も、機会も、まだまだ少ない。

その一方で、アフリカや南米、東南アジアなど、救援が必要と思われているところには大量の人的・経済的・物的資本が投入される。そしてそこに生きる若者たちも問題を感じれば声を上げ、活動し、今回のような国際的な大きなステージにも登壇し、実力を積み上げていく。その積み重ねの中で現在彼らの抱える問題がより深く国際社会と共有され、改善のための手が打たれていく。これでは、日本は取り残されていくばかりだ。

心がずんと重くなるような報告をしてしまったが、今回は「現実」をお伝えした。現実を知って、前に進む必要が私たちにはある。気落ちばかりしていても仕方がない。ここから変えていくにはどうしたらいいのか。次回は、世界の舞台での学んだことを再度見直し、希望を持って「私たちができること」も視野に入れた記事を書きたいと思う。

【Women Deliver2019 報告会開催!】
本記事に登場したWomen Deliver2019の報告会が開催されます。参加費は無料です。皆様是非お越し下さい。

日時:6月27日(木)16:00~18:00 
場所:参議院議員会館 

「いい加減、自分で決めたい自分の人生〜グローバルな視点から見た日本の”女性の健康と権利”〜」

発表/登壇:    
福田和子 (#なんでないのプロジェクト代表) 
山本和奈(Voice Up Japan代表)
コメンテーター:
北村邦夫(日本家族計画協会理事長・産婦人科医) 
谷口真由美(全日本おばちゃん党代表代行)
主催:国際NGO JOICFP 
参加費:無料 
申込:https://forms.gle/Mu3Kq3D3QxxM14ms9