2019.06.28
# AI # ライフ

女性の声のAI、性的な広告...炎上は「悪気のない偏見」から生まれる

私たちの中にある「暗黙バイアス」
治部 れんげ プロフィール

自らの感覚への過信が要因

相次ぐ炎上事例の背景には、過去に発生した似た構造の事例を知らなかったり、炎上した理由を理解していなかったりすることがある。

今月はじめ、ある県の県庁職員向けに研修を行った。テーマは自治体広報と男女共同参画である。その際に、地方自治体の広告の事例として、2年前の夏に炎上した宮城県の観光PR動画をお見せした。内容は、壇蜜さんが仙台・伊達家の末裔「お蜜」に扮し、夏でも涼しい宮城県の名所・名物を案内するストーリー仕立てになっている。

公式動画はSNSで批判され取り下げられているが、ネット上にはまだコピーが存在している。見ると、随所に性的な連想を促す演出が施されていることが分かる。頻繁に登場する壇蜜さんの唇のアップと速度を落とした話し方や、「欲しがりなんですから」といったセリフが出てくる。

こちらの写真に似た構図のショットが何度も出てくる〔PHOTO〕iStock

研修内でこの動画を流し、自治体広報としてどう思うか感想を聞いてみたところ、「唇のアップなどはやりすぎ」「キャスティングの段階で、ある程度、方向性の予想はついたのではないか」といった意見が出た。性的な表現そのものを否定しないとしても、観光客誘致という目的にはふさわしくなかったと言えるだろう。

上智大学新聞学科の碓井広義教授はYahoo!ニュース個人で「観光客誘致と言いますが、これを全国のフツーの市民が観て『ああ、仙台・宮城って素敵だなあ。行ってみたいなあ』と思うに違いない、と判断すること自体が、フツーの市民の感覚を読み違えている、というかナメているのではないでしょうか」と記している(2017年8月24日配信の記事より)。

 

宮城県の観光PR動画への批判が2017年夏に出てから、熊本県のハンドボール広告が掲出された2018年末まで1年半弱しか経っていない。せっかく予算を使って広告を出すなら、近い時期の失敗や成功事例を調べたり、組織内で色々な人に意見を聞いたりして、炎上を避ける工夫をした方がいい。宮城県の事例はインターネットで検索すれば、元の動画も関連の記事も、Twitterの反応も見ることができる。仮に予算が少ないプロジェクトだとしても、パソコンの前に座って30分も検索すれば分かることだ。

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