Photo by Dan Costa / University of California, Santa Cruz
# 生態系・生物多様性 # 環境

ゾウアザラシは見た! 南極海の「氷の穴」を動物たちが調査する

科学キーワード「バイオロギング」解説
世界の科学ニュースから押さえるべき話題を深掘りして配信する本シリーズ、今月のキーワードは「バイオロギング」。精密機器の進化が実現した夢のような映像とともに解説します。

動物たちが見せてくれる世界

鳥のように空を飛べたら、どんな景色がみえるんだろう。

そんな子ども時代の空想を現実にしたような動画がある。背中に小型カメラを着けたワシを、世界一の高さがある超高層ビル「ブルジュ・ハリファ」の上から放って撮影した動画だ。SNSで人気になったので、見たことがあるかもしれない。

ワシはドバイの空をゆっくりと旋回する。他の高層ビルがまるでおもちゃのように小さく見える。やがて地上に向かって急降下。まるでワシの背中に乗っているかような浮遊感があって、何度も見てしまう。

南極のミンククジラにカメラを取り付けて撮影した動画も気に入っている。カメラを取り付けた人なのか、ボートの上の人間がクジラに手を振る。クジラが息継ぎに浮上するたび、違った風景が見える。やがて潜行していき、海の色がどんどん濃くなっていく。

小型カメラを背負った動物たちは、生身の人間にはとても到達できない、高い空や深い海の風景を見せてくれる。

人間が見ることのできない世界を、動物の力を借りて見るという方法は、動物研究の世界にもある。動物にビデオカメラやさまざまなセンサーを取り付けて、動物自身がデータを集める「バイオロギング」という方法だ。

始まりは、アメリカの生物学者が1960年代に、キッチンタイマーを改良した記録を使って、南極のアザラシがどこまで深く潜るかを調べたことだ。今では記録計も進化して、水温や水深、泳ぐ速度など、さまざまなデータを集めることができ、GPSセンサーやデータ送信機能もついている

そうした記録計をペンギンやアザラシ、クジラ、ウミガメ、サメ、渡り鳥などに取り付けて、泳ぎ方や飛び方、食生活、社会行動などを調べる研究が行われている。

南極の巨大な氷の穴をさぐる

記録計をつけた動物たちは、自分たちの生態だけでなく、彼らにしかたどり着けない、深い海や高い空の環境についても教えてくれる。

最近「ネイチャー」に発表された、南極の海氷についての研究では、ゾウアザラシに取り付けた記録計で集めた水温や水深、塩分濃度などのバイオロギングデータが使われた。

南極大陸沖のウェッデル海は、冬のあいだ完全に氷に閉ざされる。しかし2016年と2017年の冬、この海氷域に巨大な穴が開いた。ロシア語で「氷の穴」を意味する「ポリニア(Polynya)」という現象だ。