アメリカで「大学入試」が大きな議論を呼んでいる理由

ハーバードの差別、著名人の入試不正…
畠山 勝太 プロフィール

複数回受験できることの意味

日本の現行のセンター試験と米国のSATの間にはいくつもの違いがあるが、その一つとして受験可能回数の違いが挙げられる。

日本のセンター試験は一発勝負であるが、米国は大学入試のSATだけでなく、大学院入試で用いられるGREも複数回受験が可能である。

日本でも一発勝負の弊害が語られ、センター試験を複数回受験が可能なものにしようという議論が進んでいるが、試験を複数回受験できるようになることには弊害はないのだろうか?

 

誰がSATを複数回受験していて、その効果はどうだったかを分析した論文があるのでその要点を紹介したい。

やはり、SATが複数回受験できる状態でも、実際に複数回受験するのは半数程度に留まり、約半数の受験生はたった一度しか試験を受けていない。そして、予想されるように、試験を複数回受験するのは主に家が高所得の受験生である。

単純に比較すると、中所得の家の受験生は11%、低所得の家の受験生は21%も、高所得の家の子供と比べて試験を複数回受験するのは割合が低い。そして、SATの受験料が免除されると、5%も複数回受験の割合が上昇する。

肝心の複数回受験の試験成績への影響であるが、試験に慣れたり、より勉強するようになったりといったことを通じて、試験の複数回受験は試験成績を改善させる因果的なインパクトが存在している。

そして、試験成績が改善したことにより、より多くの者が進学先を2年制のコミュニティカレッジから4年生大学へと切り替えただけでなく、進学先のレベルも向上し、卒業率まで上昇したことが確認されている。

これまでの教育経済学の知見が当てはまるのであれば、これは当然所得格差にも影響を与えてくる。

以上のことをまとめると、特に何も対策を取らないままセンター試験の複数回受験を可能にすると、主に富裕層の子供が試験の複数回受験を活用して、より良い大学へと進学し、より多くの所得を得るようになる一方で、貧困層の子供は、一般家庭から見るとそれほど高額ではないセンター試験の受験料が足枷となり、試験に不馴れな状態で一発勝負へ臨み、社会格差が拡大していく恐れが高い。

しかしこれは、受験料の免除枠の拡充によって、ある程度悪影響を押さえ込める可能性がある。