アメリカで「大学入試」が大きな議論を呼んでいる理由

ハーバードの差別、著名人の入試不正…
畠山 勝太 プロフィール

逆境スコアには大きく二つの問題点があると私は分析する。

一つ目は、その必要性である。新たなデータ・分析・複合指標は真空から湯水のごとく湧いてくるわけではなく、その生成にはコストがかかる。

では逆境スコアはそのコストに見合うだけの価値を生み出せるのであろうか?

恐らくこれはかなり難しいはずである。なぜなら、現時点でも既に大学の入試オフィスは、奨学金の関係で親の所得などのデータは取得しているし、米国では郵便番号さえわかればその地域の状況はだいたい分かるようになっている。

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前回の記事で言及した奨学金FAFSA(Free Application for Federal Student Aid)も、質問の山に答えきらなければならない割に、その中の最も重要ないくつかの質問の答えを見ればかなり高い精度でFAFSAの最終スコアを予想できた

同様に逆境スコアに関しても、恐らく入試オフィスが既に利用可能な情報で、逆境スコアをかなりの高精度で予測できると私は考える。それであれば、新しく逆境スコアを生み出す価値はほぼ無いということになる。

 

二つ目は、その頑強性である。逆境スコアの肝は、居住地と高校の環境である。

ここで思い出してもらいたいのは、有名女優が関与していた不正入試問題である。子供の大学入試のために、大金を積んでSATで不正を実行したり、偽のスポーツの実績を作り上げるような人物が少なからずいる米国である。

居住地と在籍高校の偽造とまでは言わずともこれらをハックするために大金が動くことは容易に想像がつく。自信を持って逆境スコアが世に出されたとしても、ハックされるのは時間の問題であろう。

このように、SATが導入しようとしている逆境スコアは、その意図は理解できるものの、それが実現されうるようなものなのかについては大きな疑問が残る。

教育政治学の知見を活かせば、このように世間を大きく賑わすような出来事が起きたときに、色々と教育的な施策が進んでいくのは理解できることではある。

しかし、これまでSATに関して蓄積されたエビデンスは活用されないまま、別の力学で物事が進んでいくのは悲しいものがある。

では、SATに関するエビデンスで活用が不十分なものにはどのようなものがあるのだろうか?

ここからは、日本のセンター試験の議論にも活用できそうなものを選んで紹介していく。