アメリカで「大学入試」が大きな議論を呼んでいる理由

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畠山 勝太 プロフィール

SATから逃避し始めていた大学

そもそも、これらの入試問題が噴出する前から米国の大学の中には、SATから逃避する大学が出始めていたことは特筆に値する。

この逃避の仕方は、(1)SATを提出しても提出しなくてもどちらでもよい、(2)SATに匹敵するものを提出すれば良い、(3)いかなるテストの成績も提出してはならない、の大きく三種類に分けることができる。

確かにSATから逃避しているのは、それほど入学難易度が高くない大学が多いが、日本でも知られるような超有名大学の名前も確認できる。

(1)について言えばシカゴ大学がこれに該当し、(2)に関してはニューヨーク大学が該当する。

 

以下では、なぜ大学が共通試験から逃避し始めているのか理解するために、シカゴ大学の事例を紹介する。

(もちろん現状では、受験者数を確保するのに困っていない有名大学は依然としてSATにこだわっており、SATから逃避している大学の多くが受験者数の確保すら怪しい大学である。このことから、SATからの逃避の少なくない割合が、大学受験者がSATの受験料を節約できる分だけ数多くの受験者を集めることを目的にしていることが示唆される)

〔PHOTO〕gettyimages

シカゴ大学がSATから逃避した説明を読むと、これには二つの理由が存在していることが読み取れる。

第一の理由は、第一世代(家族の中に大学卒業者が誰もいない学生)・貧困者対策である。

シカゴ大学は、より多くの第一世代・貧困層の学生がシカゴ大学に入学してくれるようにするために、「Empower Program」を開始した。

このプログラムは奨学金の提供など様々なコンテンツからなるものだが、SATからの逃避もその一部として紹介されている。

つまり、シカゴ大学は現行のSATは過剰に富裕層の子弟にとって有利なシステムであり、優秀な第一世代・貧困層の子供がシカゴ大学に入学するための障壁となる、と考えているのである。

第二の理由は、SATの妥当性への疑問である。もちろん、学力試験としてのSATの妥当性は低くはない。良くも悪くも、民間試験団体は、米国教育大学院の博士号取得者の大型雇用口である(しかも、一般的に、給与は教育行政やアカデミアに行った場合よりも高い)。

確かに近年は東アジアからの留学生に試験がハックされるなど問題が指摘されるようになってはきているものの、専門家が試験範囲や出題方法、難易度などを細かく調整しており、学力試験としてのSATの妥当性それ自体はシカゴ大学が危惧するほどの問題を抱えているわけではない。

危惧されている妥当性とは、学力試験が受験者の能力を適切に反映できているのかどうか? という点である。

実際にシカゴ大学は、SATの代わりに、受験者が自身の能力を適切に反映できていると考えられる資料――例えば2分間のアピール動画など――の提出を認めている。