# ALS # 安楽死

彼女は安楽死を選ぶしかなかったのか

NHKスペシャルとふつうの難病生活
川口 有美子 プロフィール

「私らしさ」や「自己」を柔軟にする

ところで、NHKは同病同性の患者の映像をもう一人用意していた。その人は長期入院の女性患者で、病院から自宅に帰ることもままならないのだが、それでも生きていたいと語っていた。家族との関係を大切にしているその人の、静かな覚悟をもっと聞いてみたかったが、一般の視聴者にはどのように映ったのだろう。

障害を受け入れて生きる人と、障害を拒んで死んでいく人。その二者を対置させる演出は、安楽死をより鮮明に印象付けたに違いない。

 

でも、私はそのような二者の見せ方では、足りなかったと思っている。個人の選択の尊重とか、死の自己決定ということから、安楽死合法化という問いを少しずらしてみたいのだ。

たとえば第三の女性患者として、地域社会と繋がって毎日忙しく暮らしている、白井ゆりさんのような人も取り上げてほしかった。いったんは死にたいと願っても、苦境を乗り越えていく人もいるのである。

そして、先に具体的に述べたような、周囲の取り組みとしての緩和ケアや介護サービスについても、広く知ってもらうことが重要だ。これらは一般にはあまり知られていないのだから、死の合法化を問題提起することなどより、はるかに重要なジャーナリズムの役割だと思う。

生き続けていれば、いつかは介護を受ける身になる。それは人間の当然の成り行きなのだが、健常者として長く生きてきた人にとっては、介護を受けるということは、そう簡単なことではない。

私らしさとか自己とかいうものを、柔軟にするにはどうしたらいいのだろう。その方法について考えていきたい。