# ALS # 安楽死

彼女は安楽死を選ぶしかなかったのか

NHKスペシャルとふつうの難病生活
川口 有美子 プロフィール

彼女は安楽死を選ぶしかなかったのか

今年の6月2日午後9時から50分の枠で放映されたNHKスペシャル「彼女は安楽死を選んだ」というドキュメンタリー番組で、多系統萎縮症の日本人女性が、スイスに渡航して、医師による自殺ほう助で死んでいく場面が放映された。

個人の自由を貫いた結末の安楽死。放送をご覧になった方もいるだろう。

私は多系統萎縮症の人を何人か知っているし、出向いて介護したこともあった。皆それなりに暮らしている。だから、この人にも生きていて欲しかったと思っている。考え抜かれた選択だろうから、否定することはできないとも思うのだが、自殺を食い止められないということは、とても残念で歯がゆかいことだ。

番組は彼女の意思を積極的に肯定していたし、姉二人は泣きながらも、妹の意思を尊重して見守った。でも、人が死ぬのを見守るというのは、合法的といえども人道的にはありえない事態である。まして、それが身内だとしたら辛すぎる。その場の姉たちの心中を思うと、いたたまれなくなってしまう。でも、妹を一人で逝かせるわけにはいかないと思えば、最期までついていてあげたいと思うのも道理である。私も同じ立場であれば、そうしただろうとも思うのだ。

 

病苦を理由に安楽死したい人、自殺したい人は大勢いる。ただし病苦にもいろいろあって、この人のような多系統萎縮症やALSなどの進行性疾患では、呼吸器などの生存維持装置を使わないことにすれば確実に死ねるのだから、進行に身を委ねて亡くなるまで待てばいいし、いよいよ末期で、呼吸が辛いということになれば、モルヒネを使えばさほど苦しまずに死ねるはずで、そういう知識もこの人は当然持ち得ていたはずだ。

しかし、この人は死ぬまで待てなかった。「寝たきりで10年も20年も生きるなんてまっぴらごめんなの」ということは、重度障害者になるくらいなら、死んだほうがましということで、そのために日本でも安楽死を合法化したいと言うのである。