もともとは「街の牛乳屋さん」
ローソンの代表的な商品といえば、'09年に発売された『プレミアムロールケーキ』。累計で約3億6000万個を売り上げ、コンビニスイーツブームの立て役者となった。
この商品の特筆すべきポイントは「クリーム」だ。昨年には、クリームを大幅にリニューアルしたり、クリームだけを販売したりするほど力を入れていることがわかる。
同社の公式HPによると、「ミルク感を感じられる仕立て」にしたとあるが、これほどまでクリームにこだわっているのはワケがある。実は、ローソンはもともと「街の牛乳屋」だったのだ。
時計の針を80年前に戻そう。1939年、アメリカのオハイオ州で酪農家J・J・ローソン氏が「ミルクショップローソン」を創業した。これが、ローソンの原点だ。
彼が作った牛乳は、新鮮で美味しいと地域で評判を呼び、毎朝たくさんの人が買いに来るようになったという。
経営が軌道に乗ったローソン氏は、ミルク以外に日用品などを取り扱い始めると店はいっそう大繁盛。「ローソンミルク社」という会社を起ち上げ、アメリカ北東部を中心にチェーン展開するほどとなる。'59年、これに目をつけた食品業界大手のコンソリデーテッド・フーズ社がローソンを買収して、コンビニの運営システムを確立させた。
そして、'74年にはダイエーがコンソリデーテッド・フーズ社と提携を結び、日本にローソンが進出することになった。
いまや日本全国に1万4000を超える店舗数を誇るローソンだが、まだ牛乳屋だった頃の名残は店の看板に残っている。ロゴをよく見ればわかるのだが、中央に描かれているのは文字ではなくミルク缶である。
それだけ、ローソンにとって牛乳とは特別な存在なのだ。ローソン初のプライベートブランド商品は牛乳だし、大手コンビニチェーンで初めてホットミルクを販売したのも同社だ。一貫して牛乳を重視し続けている。
創業の歴史に思いを馳せれば、いっそうクリームが美味しく感じられるかもしれない。(水)
『週刊現代』2019年6月22・29日号より