ある日突然、エリートが「加害者」となったシンプルな理由

犯罪者を生み出す「不幸」の正体
阿部 恭子 プロフィール

解決に近道はない

終わりが見えない引きこもりや家庭内暴力は、家族の死を持ってしか解決できないのか。

筆者は、一触即発の危機を乗り越え、平穏な生活を取り戻した家族も数多く見ている。

問題を乗り越えた家族と、犯罪によって問題を終わらせた家族の違いは何か。

それは、見栄を張らなければならないような付き合いを断ち、弱さをさらけ出せる仲間や支援者と繋がりを再構築できたかどうかである。

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筆者は加害者家族同士が体験を語り合う会を主催している。同様に、「引きこもりの子を持つ親の会」や「依存症者の家族の会」といった問題を共有できるグループが各地に存在している。ひとつではなく複数のグループに参加している人も多い。

参加者の体験に耳を傾ける中で、家族間では意識していなかった問題に気づかされることがある。こうした「気づき」を重ねることによって自分自身が変化し、家族とのコミュニケーションも良い方向に変化していく。

 

ただし、家庭の中で長年蓄積された問題が一気に解決に向かうわけではなく、変化が現れるには時間を要する。

早く正確に答えを出す訓練しか身に付けていないエリートの中には、このようなプロセスを無意味と評価する人も少なくない。しかし、こうした仲間との時間の共有や細いいくつもの繋がりが命を守っていることは事実である。

家庭の問題を他人に話すことは勇気のいることである。相談窓口が存在しても、話を聞くだけで終わってしまっているのが実情だ。勇気を出して相談したにもかかわらず、具体的なアドバイスがなく、恥をかいただけで終わったと不満を訴える人もいる。

それでも、家庭の問題を外に出したことは解決への大きな一歩である。恥をかく経験も人間を強くしていくのだ。問題を乗り越えた家族に共通することは、プライドや特権意識から解放されたことである。