ある日突然、エリートが「加害者」となったシンプルな理由

犯罪者を生み出す「不幸」の正体
阿部 恭子 プロフィール

マジョリティの弱点

筆者が出会ってきた加害者家族の多くは、事件以前は、自立した社会生活を送っているマジョリティだった。それが突如、事件をきっかけとして社会的信用を失い、社会から差別を受け排除されていくのである。

社会的に追いつめられ、自殺に至るケースが存在するにもかかわらず、こうした「隠れたマイノリティ」への支援は届きにくい。

社会からの援助を必要として生活しているマイノリティは、困りごとを抱えた時、援助を求めることに対するハードルが低く、「社会と繋がる」発想を持っている。

 

一方で、自立した生活ができていたマジョリティこそ、他人に頼ることや弱さを見せることを恥と考え、問題を抱え込む傾向がある。

地域に相談窓口や支援組織がいくつ存在していたとしても、困りごとを抱えた人々に、社会と問題を共有するという意識がなければ、そこに辿り着くことはできない。

筆者のもとに相談が持ち込まれるのは既に事件が起きた後である。事件原因を辿っていくなかで、背景に家庭内暴力や依存症といった家族病理が潜んでいたケースは少なくない。もし、家族の問題が解決していたならば、事件への発展を防ぐことができた可能性は高い。

人々が、社会的援助に繋がりやすくなるためにはどうすればよいのか。

前提として、学校でも家庭でも「人に迷惑をかけてはならない」という教育を「支え合い」や「助け合い」に変えていかなくてはならない。他者より優位であることが重視された競争社会では、ただ強い個人であることが求められてきた。

しかし、本来、人間は弱い存在であり、誰しも互いに迷惑をかけ合いながら生活している。人に頼らず、自分の問題は自分で解決できるという過信が、最大の犯罪を招くこともあるのだ。