本物の大金持ちがタワマンに住まない「これだけの理由」

総工費10億円の豪邸、こだわりと愛情
週刊現代 プロフィール

佐藤さんが暮らす麻布と双璧をなす、港区の高級住宅街といえば高輪だ。桂坂には、『眠狂四郎』などで知られる歴史小説の大家・柴田錬三郎の私邸が残っている。

60坪程度の敷地に建つ2階建ての洋館風の邸宅で、外壁には蔦が絡まり、文豪の邸宅といった風情が色濃く残っている。

Photo by iStock

交通は不便でもいい

柴田邸に出入りする関係者が、この一戸建ての来歴を教えてくれた。

「私は今の家に先生がご存命のころから出入りしていますが、竣工した当時から何も手を加えられていないと聞いています。

普通の方のお宅でしたら難しかったでしょうが、大先生のお宅ということで、ご一族がしっかりとメンテナンスされ、今も生活できる状態になっています。

ここ桂坂の一帯は、三井財閥の大番頭と呼ばれた朝吹常吉さん(元三越、帝国生命保険社長)の土地で、柴田先生の私邸はそれを買い取って建てられたものです。周辺にマンションは増えましたが、それでも樹木の多さは港区でも指折りだと思います。

高輪台駅から地下鉄に乗るときは傾斜のきつい桂坂を上がっていくのですが、これがけっこう大変。今度山手線に高輪ゲートウェイ駅ができるようですが、いまは最寄り駅がだいぶ遠く、交通に不便な立地です。

だから、このあたりの一軒家の住民は、便利とかどうとか考えず、ずっと昔からここで暮らしていることが当たり前と思っている人たちでしょう」

白金台から大通りを一本超えると上大崎、また高輪から南下すると北品川と、それぞれ品川区に到達する。港区と品川区の境目といえるこのエリアにも、都心有数のセレブタウンが点在する。

そのひとつが、上大崎の「長者丸」と呼ばれるエリアだ。南北朝時代からのお屋敷街である長者丸には、豪奢な邸宅が今も立ち並ぶ。

そのなかでも群を抜いて目を引くデザイナーズ住宅があった。地上3階建て、三角屋根には丸窓がついており、屋根裏部屋があることがうかがえる。

精密機器メーカーの創業者である持ち主の妻・的山久美子さん(仮名・63歳)が約140坪の大邸宅での暮らしを話してくれた。

「建物の設計は、長渕剛さんや北島三郎さんのお家も手掛けたデザイナーさんにお願いしました。その方を信頼して、本人のこだわりを詰め込んで設計してもらったのが気に入っているところです。

見学に来た時、土地代が予算をオーバーしていて、諦めようと別の土地を押さえていたんです。ところが地価が下がったので、地主が分譲して売り出す予定日の2日前に慌てて『やっぱり、まとめて買おう』と決めました。

押さえていた土地は違約金を払い、せっかく長者丸に住むのだからとデザイナーズ住宅を注文したら、予算オーバーどころの騒ぎではなくなってしまいましたけどね」

 

もともと三菱重工の役員が住んでいて、家主が亡くなったあと相続税対策として売りに出された土地だという。長者丸は三菱系の重役や、サッポロビールの創業家一族が暮らした街だと住民が教えてくれた。

「意外とご近所づきあいも盛んなんですよ。古くからの家が多いので、町内会活動が盛んで、住民の集まりもよくあります。みんな律儀に月1500円の町内会費を払っていますよ。

町内会長を務めているのは、渋沢栄一の子孫にあたる方ですね。渋沢家といえば、麻布のマダガスカル大使館に土地を貸しているのも渋沢家だったかと思います。

街の知名度は麻布や青山に及ばないかもしれませんが、歴史的にも長者丸エリアは日本一の住宅街だと思っています」

関連記事