本物の大金持ちがタワマンに住まない「これだけの理由」

総工費10億円の豪邸、こだわりと愛情
週刊現代 プロフィール

虎ノ門の「ポツンと住宅街」

赤坂や六本木といった繁華街がひしめく港区に住むとなると、ある程度ビジネスで成功していたとしても、タワマンや高級賃貸などの集合住宅を選ぶことが多い。

だが、10億円単位の資産を持つ「本物」のお金持ちや、港区という地を心から愛している人にとっては、大枚をはたいて一国一城の主となることが、ひとつの誇りになっている。

南青山から東に4kmほど進むと、都内有数のオフィス街・虎ノ門にたどり着く。バブル期には金融機関がこぞって支店を構えた桜田通り周辺も再開発が進み、古いビルや商業施設が目下取り壊しの最中だ。

こんなオフィス街に住んでいる人がいるのかと思うかもしれないが、一本裏通りに入れば、豪奢な一軒家が取り残されたかのように肩を並べるエリアに突き当たる。

 

緩やかな坂を上り、高台になったあたりに、向かいに建っている3階建てのマンションにも引けを取らない大きさの邸宅がある。敷地はおよそ200坪ほど、曲線がかった外壁が印象的な3階建ての邸宅の主は、細野茂さん(仮名・77歳)である。

細野さんは都内で完全予約制の皮膚科を経営する開業医だ。レーザー治療がメインで、診察に出ずっぱりということで、細野さんの妻が港区に大豪邸を構える理由を明かしてくれた。

「夫のところに嫁いでこの場所に住んで、50年が過ぎました。それまではここから近い、神谷町駅の周辺に住んでいたんですけどね。

細野家は虎ノ門エリアに住んでから、夫の代で4代目になります。初代は宮内庁と取引があった米屋だったと聞いています」

神谷町駅周辺には「城山」と呼ばれ、スウェーデン大使館や城山トラストタワーが建つ地域がある。現在では地図から消えた地名だが、かつては豪族が城を構え、江戸時代には武家屋敷が並んだ由緒正しきエリアだ。

細野さんが住む地区も同様に歴史ある屋敷街だ。近頃の再開発でタワマン街や高層ビル群へと変化したが、細野さん宅のエリアはさながら「ポツンと住宅街」といった具合に残っている。

同じ土地に50年住み続ける細野さん夫妻は、虎ノ門が刻々と変わっていく様子を見届けてきた。

「当たり前ですけど、50年前と比べればまるっきり街の様子は違いますよ。最近でいえば、再開発ラッシュで虎ノ門ヒルズとかいろんなビルができて、我が家の2階から見えた東京タワーがすっかり隠れてしまったことでしょうか。

もともとは見晴らしのいい高台なのに、いかんせん周りは高層ビルだらけなものですから。

ここ数年、虎ノ門周辺はものすごい勢いで地価が上がっていて、我が家の東側、坂道の途中に建っている家では、立ち退きに応じた人も多いみたいですね」

Photo by GettyImages

ただ、豪邸が並ぶ細野家の一角には、立ち退きの波は及ばなかった。なぜなのか。

「この地区の裏に宗教法人の大きな土地があり、まとめて整地すると膨大な土地を押さえなければならないとあって、大手も諦めたのかもしれません。

事実、昔からここに住んでいる近隣数軒では、立ち退きに応じるどころか交渉を持ちかけられた家すらないと聞きます。『ここは特別な土地なのかもね』なんて、お隣さんと冗談を言い合うくらいです。

港区というと夜の店が並ぶ繁華街のイメージがあるかもしれないですけど、このエリアはほんとうに治安も良くて、都心なのにゆったりと過ごせるのが住み続ける理由ですね。

これだけの敷地で、固定資産税は毎年100万円や200万円じゃきかないですけど、おカネの問題じゃない。4代住み続けた虎ノ門の土地から出たくないという思いもあります」

実際、港区の高級住宅街とされるエリアを歩いてみると、10年前まで大きな屋敷があった土地が分割されて小さな戸建てが建てられたり、マンションに生まれ変わっているケースが多くあった。

土地を手放す人が増えるにつれ、ケタ違いの一軒家にお目にかかれる機会も減ってくる。だからこそ、超一等地に大豪邸を持つことは、何物にも替えがたいステータスになるのだ。

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