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消えた衆参ダブル選…菅官房長官はいま何を狙っているのか

「雑草」がすべて奪い去る

ダブルを諦めさせた男

「新しい元号は『令和』であります」

新時代の幕開けを告げる男は、無表情ながらもやや顔を紅潮させ、誇らしげに額縁を上に掲げた。

だがこの場面、官房長官・菅義偉(70歳)にとっては痛恨のアクシデントが起きていた。菅が「令和」と大書された額を掲げた時、NHKでは画面のその位置に手話通訳者の映像がかぶり、視聴者には、せっかくの新元号が見えなかったのだ。

「影の総理」。安倍政権で6年半にわたって官房長官を務め、陰に陽に権力をふるう菅のことを、人はそう呼んで畏怖する。

しかし菅の本質は、あの場面に凝縮されている。堅実な仕事人としての凄みはあっても、華やかなスポットライトを浴びる姿は、どこか似合わない。菅自身も、それを承知している。だから周囲に問われると、こう答える。

「総理になるつもりは、まったくありません」

だが果たして、それは菅の「本心」なのか。

 

永田町を騒然とさせながら、突如として消えた「夏の衆参ダブル選挙」。そこで一役買ったのは、菅だったとされている。

「ここでやらなければ、いつやるんだ」

そう言って主戦論を唱えた麻生太郎副総理兼財務相に対し、「(衆院現有の)283議席を捨てるべきではない」と、クールに釘を刺したのが菅だったという。

「安倍首相は前回'16年の参院選で獲得した56議席を下回ることだけを恐れていた。ところが水面下で情勢調査をしたところ、『60~65議席獲得』という結果が出た。

首相は迷っていたが、結果として主戦派の麻生氏の意見を退け、菅氏の言を採用した」(全国紙政治部幹部)

これこそ菅が、「次の総理」と言われる所以だ。政権の最高顧問を自任するのは麻生。だが安倍がもっとも信頼を置く側近は、誰が見ても菅なのだ。

しかし、それほど重用しながらも、安倍が菅自身の処遇について希望を聞くことは一切ない。

「第4次安倍改造内閣が発足する際、菅さんは官房長官を退き、党の幹事長になりたがっていました。ずっと政権を支え苦労してきたのだから、望みのポジションを要求したのでしょう。でも、安倍さんがそれを許さなかった」(政権幹部の一人)

全幅の信頼……と言えば聞こえはいいが、見方を変えれば飼い殺しだ。霞が関人事までコントロールする菅に、幹事長ポストを与えて党まで掌握させては、その存在が大きくなりすぎる。安倍が、そのラインを超えさせることは決してない。

「菅さんは麻生さんともソリが合わない。かつて消費税増税の延期で政権内が割れた際、増税派の麻生さんから、『書記官』扱いで面罵されたこともある。

菅さんは周囲に『毎日の会見がストレスだ』とこぼしたことがありますが、失言の多い麻生さんの尻拭いをするのも菅さんの仕事ですからね」(自民党中堅議員)