高齢ドライバー交通事故「加害者と家族」が明かす、苦悩と後悔の日々

起きてからでは、取り返しがつかない
週刊現代 プロフィール

運転を止められなかった…

高齢ドライバーによる事故がその家族に残した罪の意識は、加害者本人がこの世を去ってもなお、家族を縛り続ける。

広島県に住む橋本寛子さん(58歳・仮名)も、ずっと苦しみ続けている一人だ。

'16年4月、山口県内で当時82歳の橋本有平さん(仮名)の運転していた自動車が歩道に乗り上げ、歩いていた40代の男性をはねた。男性は病院へと搬送されたものの、意識は戻らず数時間後にそのまま死亡した。

Photo by iStock

有平さんの次男の妻である寛子さんは、嫁いで以来、夫とともに有平さんと同居していた。

「事件後、私も軽いうつ病を患っているのですが、最近は自動車事故のニュースが多かったでしょう。あれを見るたびに、事故当時の自分たちのことを思い出してしまって、まったく眠れなくなりました。

あの日、どうして私はお義父さんに運転を許してしまったのか。3年間、毎晩毎晩やんでいます」

最初は「被害者の方に申し訳が立たないので」と本誌の取材を固辞していた寛子さんだが、そのうち「同じように高齢のドライバーを身内にかかえる人の役に立てるなら」と、事故とその後の日々について、ポツリポツリ語ってくれた。表情には疲れが滲んでいる。

当時、妻に先立たれた有平さんは、家から7kmほどのところにある老人福祉センターに毎日のように車で通い、友人たちと囲碁やカラオケに興じるのが楽しみになっていた。

 

その日の朝も、運転を止めるよう声をかけた寛子さんを横目に、有平さんは特に気にする素振りもなく、福祉センターへと出かけていった。

「主人も私も、お義父さんが80歳を過ぎて反応が悪くなったように感じられてからは、『もう運転しちゃダメ』と、口を酸っぱくして言い続けていたんです。

3人で顔を突き合わせて、再三説得していました。でも、『唯一の楽しみだから』と聞き入れてもらえなかった。

事故が起きる前の晩には、主人と『車の鍵を隠そうか』と話していたばかりだったんです。その矢先に、あの事故が起こりました」