中華食材を幅広く扱う店。西川口には中国人が暮らすための機能がコンパクトにまとまっている

中国人が数多く暮らす街・川口市を歩いてわかったこと

日本の異国を旅する・中編
埼玉県にある西川口駅周辺は、中国の東北部出身の人々が多く住み、チャイナタウンと化している。その隣の蕨駅から近い芝園団地に住む半数は外国人だ。なぜ彼らは川口市に住むようになったのか? 街を歩いてみると、日本人と外国人のコミュニケーションの在り方が見えてきた。

ガチ度の高い料理店が多い

 

埼玉県南東部、西川口。近ごろ、話題である。いわく「中国人に占領された街」「ニューチャイナタウン」「犯罪が増えている」……。

いいイメージで語られることは少ないのだが、実際にJR京浜東北線の駅を降りてみると、なんということもないベッドタウンだ。駅のまわリにはチェーン店やマンションが立ち並び、通勤や通学の人々が行き交う。

駅の西口を出て、少し歩いてみれば中国語の看板がちらほらと見つかる。「飯店」「餐庁」など、レストランが多いようだ。中華の食材店だとか、中国語の通じる不動産屋などもちらほらと点在し、なるほど中国人の存在感がある。

とはいえ、だ。ネットやマスコミで語られているほど「中華一色」というわけではない。圧倒的に多いのは、当たり前だが日本の店である。そこに中国の店もいくつか混在している。

それらの大半は、生活を支える店だ。故郷の味のもととなる食材店、中国語に特化したPCの並ぶネットカフェ、中国語の曲があるカラオケ……どれも観光客向けのものではない。ここは横浜や神戸などとは違う。西川口は中国人が暮らす街なのだ。

そのぶん、ガチ度の高い料理店が多い。いま中国全土で流行している麻辣湯(マーラータン)の店もよく見かける。野菜や肉、練り物などの具材や、麺や春雨の太さを自分好みで選ぶ「辛うまスープ麺」の店だ。留学生らしき若い中国人で賑わう。

東北部出身の人が多い理由

東北部の料理も目立つだろうか。羊肉の串焼きや、巨大な鉄鍋で具を炒め煮る迫力ある料理が人気だ。カイコのサナギを使った料理まである。チンジャオロース、麻婆豆腐のような一般的メニューとはずいぶん違う。

西川口では本場の中華料理を楽しめる

というのも、いま西川口で暮らす中国人は、東北部出身の人が多いからだ。瀋陽や長春、ハルピンなど、いわゆる旧満州である。

その時代から日本と結びつきが強かったこと、中国残留孤児も多く住んでいたことから、いまも東北部の人々にとって身近な外国といえば日本だ。そして東北部は、目覚ましい発展を遂げた北京や上海、広州などの沿岸部や大都市からは、経済的にやや遅れた地域でもある。貧富の格差も大きい。

そんな人々がチャンスを求めて日本にやってくる。中国で豊かになった地域の人々が海外でチャレンジするといえば、もはや日本をスルーして欧米やオセアニアになるのだが、東北部では「日本行き」がまだまだ人気だ。

彼らは、まず留学生として日本の地を踏む。語学学校などで日本語を勉強し、日本の文化に慣れていくのだ。そして専門学校や、外国人を広く受け入れている大学に進学していく。

こうした学校は日本の少子化を受けて経営が逼迫している。外国人留学生を迎えることに活路を見出しているところも多い。日本語に堪能な外国人が、優先的に入学できる制度を整える学校もある。