「4世代家族」と「5つ子」から見えた、若い母親が直面する現実

多様な婚姻関係は日本の未来を導くか
井戸 まさえ プロフィール

児童虐待ハイリスク

若年出産、未婚、離婚、複婚、シングルマザー……「(女系)4世代家族」の一人ひとりのプロファイリングを見るとこれは昨今の児童虐待の母親たちのものと重なる部分が多いことに気がつくだろう。

数名の例外はいるものの基本、子の父親の姿はない。「夫」や「彼氏」を乗り換えながら生きているように見えるのは、基本彼らは頼れないからこそ、なのであろう。ここでさらに虐待母たちが晒されたリスクとかぶる。

細辻恵子の『揺らぐ社会の女性と子ども 文化社会学的考察』によれば「シングルマザー」という呼び方が日本で定着してきたのは、1990年代以降である。

それまでは「母子家庭」「母子世帯」あるいは「未婚の母」と呼ばれ、家族について論じられる脈絡においては順調な形態で婚姻を結んだり、維持したりできない「欠損家族」として、家庭病理の対象として扱われてきたという。

なぜかといえば、「貧困」と結びついているからである。

また、子の父と別離を経ているということは、そこに家庭内暴力、養育についての争い等、さまざまな問題をひきづり、こじらせている場合が多い。経済的にも精神的にも援助を必要とする状態に置かれているのだ。

 

しかし、4世代家族の女性たちを見れば、自分たちに起こった世間的に見れば「不幸」を笑い飛ばしながら、女性中心の「生育家族」でつながり、助け合いながら子育てをしている。

自分の人生の生き詰まりは、前の世代でもあったこと。失敗談を聞き、立ち直っている事実も見ているからこそのたくましさであり、それが子育ての責任感につながっているのかもしれない。

〔PHOTO〕iStock

「責任感」については、昭和の育児書として1969年以降一斉を風靡した『育児の百科』(岩波書店)の著者で小児科医の松田道雄が印象的な言葉を残している。

「責任は、集団のなかで自分の役割と集団行動の目的がわかってきてはじめて感じることである」

楽しい集団には「友情」が生まれる。それによって責任感が形成されるというのだ。4世代家族は「子育て集団」として、若い母親たちに子育てに対する責任感を促す箱にもなっているのである。

児童虐待事件が相次ぐが、加害者となった母たちに、もしもこの共同体、集団があったならば事件は起こっただろうかと考えると、切ない思いにかられる。