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解決したと思っていたが…「環境ホルモン」問題、実は悪化していた!

スジイルカには海水中の1000万倍も
環境中に存在し、生体のホルモン作用をかく乱する化学物質「環境ホルモン」が社会問題化して、流行語大賞の上位にノミネートされたのは1998年のこと。

それから20年以上が経ち、「環境ホルモン」という言葉を聞く機会はめっきり減った。環境ホルモンの代表格ともいえるダイオキシンは、国を挙げた排出規制や環境技術の革新によって環境中への排出量は大幅に削減された。多くの方は「環境ホルモンをめぐる問題はほぼ解決した」と思っているのではないだろうか。

しかし、現実はまったく違っていたのである。

21世紀に入り、先進国を中心に厳格な化学物質の排出規制が導入されたこともあり、目に見えるような汚染は少なくなった。

しかし、近年、工業化の進展が著しい中国に代表される新興国で新たな汚染が広がり、地球規模で見ると、化学物質による環境汚染はさらに拡大している。

厄介なことに、一度環境中に放出された化学物質は簡単には分解せず、大気や降雨、海流などを通じて、世界各地に拡散している。環境を汚染する化学物質は、排出源からはるか遠方の北極や南極などにも広がっているのだ。

2019年6月に刊行されたブルーバックス『地球をめぐる不都合な物質』では、ダイオキシンに代表されるPOPs、マイクロプラスチック、PM2.5や水銀など、地球規模で汚染を拡大している化学物質を取り上げ、その最新の研究成果を紹介している。本稿ではそのエッセンスを紹介しよう。

汚染Photo by Dustan Woodhouse on Unsplash

悪化の一途をたどる「POPs」の汚染

人類は、これまで無数ともいえるさまざまな化学物質を生み出してきたが、その中でも、生態系にとって深刻なダメージを与えているのがPOPs(Persistent Organic Pollutants=残留性有機汚染物質)である。

環境中に放出されたPOPsは、生体内に容易に侵入し、ひとたび生体内に入り込むと、そこに長期間とどまる。

さらに、POPsは、環境中では低濃度であっても、食物連鎖を通じて生態系の上位に向けて生物濃縮が進む。その結果、アザラシ、アシカ、セイウチ、イルカなどの鰭脚(キキャク)類や鯨類では、驚くほどの高濃度になることが知られている。たとえば、西部北太平洋に棲むスジイルカが、海水中の1000万倍もの高濃度でPCB(ポリ塩化ビフェニル、代表的なPOPsのひとつ)を蓄積していたとの報告もあがっている。

POPsに代表される化学物質による海洋汚染は年々悪化の一途をたどっている。