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名門・東レは「血の一滴でがん検査」の新製品で起死回生なるか

2020年の市場流通を目指す

95%以上の精度の解析力

「ここのところ、東レは水処理システム事業部での不正会計疑惑や社員の契約書偽造など、名門の名を汚す醜聞を連発していました。久々の吉報だけに、同社のがん検査キットに懸ける思いは強い」(全国紙経済部デスク)

東レが開発したのは、血液一滴から複数のがん発症の有無を一度に検査するキットだ。2014年から国立がん研究センターなどと共同で始めた研究プロジェクトが終了し、今年中に厚生労働省に製造販売の承認を申請する予定だ。早ければ来年にも医療機関で検査キットが使えるようになる。

 

検査キットに内蔵されている遺伝子解析チップは、がん細胞ができると血液中に増える遺伝物質「マイクロRNA」を検出する。これにより、ごく少量の血液でがん細胞の有無の判定を95%以上の精度で行うことができるという。

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遺伝子検査からがんを特定する技術は米国などですでに実用化されているが、発見確率はまだ低い。東レの得意分野である素材加工を活かした検査キットは、厚労省の「先駆け審査指定制度」対象となった。画期的な効果が得られると見こまれる研究は優先審査の対象になり、最短で6ヵ月後には認可を受け、製造販売が可能になる。

医療・バイオ分野は好材料が出ると大きく株価や業績が伸びることが多い。東レの株価も6月10日、前日比+7%に迫る急騰を見せた。

医薬事業は東レの「主力」になりえるのか。岡三証券投資戦略部シニアストラテジストの小川佳紀氏はこう分析する。

「富士フイルムが医薬品や化粧品で成功したのを受けて、東レも自社技術を応用して医薬事業に参入する機会を以前から窺っていました。近年の東レの稼ぎ頭は炭素繊維ですが、需要の停滞が懸念事項でしたから、医薬事業に活路を見出したのは好材料と言えるでしょう。

ただ、問題は売上高2兆円規模の超大手である同社の業績を変えるほどのインパクトがあるのかどうか。一回数万円とされるがん検査のニーズも未知数なのが現状です」

久しぶりに訪れた好機を、東レはどう生かしていくのか。

『週刊現代』2019年6月22・29日合併号より