タンカー攻撃事件で安倍首相イラン訪問の「評価」は変わるか

成功・失敗を判断するいくつかの視点
篠田 英朗 プロフィール

より複雑なのは、イラン以外の中東諸国との関係だ。イスラエルはもちろん、イランと敵対するサウジアラビアやUAEは、日本の仲介でアメリカとイランの関係が改善することなど望んではいない。それらの諸国の戦略的目標は、イランの封じ込めだ。

核兵器だけの話ではない。強化された経済制裁の継続は、湾岸諸国の望みに沿っている。そうした観点から見れば、安倍首相は邪魔者でしかない。

これらの諸国と、日本の同盟国であるアメリカは、イランを封じ込める政策について、立場を一つにしている。安倍首相は、イラン訪問前に、イスラエル、サウジアラビア、UAEに電話をしたとされるが、その際の様子は明らかにされていない。

日本は、異なる立ち位置をとっている。それでも日本ならではの存在意義があるはずだ、というアピールをしたいのが日本外交の方向性だ。

トランプ大統領に対しては成功しているように見える。だが同じ受け止め方は、湾岸諸国の間では広がっていない。

タンカー攻撃事件が、仮にイラン以外の諸国による事態をかく乱させるための陰謀であったとすれば、日本に対する苛立ちがその背景にあることになる。

〔PHOTO〕gettyimages

今回の安倍外交は、トランプ大統領の意思を伝達する役割を担ったものであったので、イラン核合意の枠組みを維持し続けているヨーロッパ諸国との意思疎通も確立されているようには見えない。

新しい交渉のプロセスを始めるのだとすれば、それはヨーロッパ諸国にとっては、かえって迷惑なことですらある。

総合的に見て、安倍外交は、日米同盟を外交の基軸に据える姿勢を一切変更せず、失点を慎重に回避しながら、イランとアメリカの関係改善への努力を払うものであった。

安定的な見取り図が維持されていたが、それだけに劇的なものだとまでは言えなかった。アメリカ以外の諸国においては、日本に対する印象が複雑化することは、織り込み済のことでもあった。

こうした状況において、タンカー攻撃事件の真相解明に何らかの発展が見られるかどうかは、安倍外交の最終的な評価に影響を与えていくことになるだろう。