タンカー攻撃事件で安倍首相イラン訪問の「評価」は変わるか

成功・失敗を判断するいくつかの視点
篠田 英朗 プロフィール

野党は、国会で、安倍外交の失敗の証左だ、として糾弾する予定だという。

確かに安倍・ハメネイ会談が大成功だったと描写するのは、いささかやりすぎと思われるが、安倍外交のせいでタンカーが攻撃されたと即断するのも相当な勇み足になりかねない。

何よりも民間船舶に対する武力攻撃の責任は安倍首相にある、といった言い方は、現地事情を無視しているだけでなく、犯罪実行者の責任を不問にして国内政争に明け暮れようとする姿勢につながる。日本ムラの残念な出来事ということになっていくだろう。

今回は犠牲者が出なかったのは、本当に幸いだった。犠牲者が出ていたら、日本ムラの政争だけに明け暮れることは、極めて不謹慎になる。

それにしても、野党は、しっかりと犯罪者に対する糾弾の言葉を表明してから、安倍外交の成果を議論するという姿勢をとっていくことを心掛けてほしい。

安倍外交の評価軸

それではわれわれはどのようにして安倍外交を評価するべきか。当然だが、適切な目標設定の有無と、それに沿った成果の有無を見て、評価するべきである。

さらに言えば、広く国際情勢の安定から見た観点と、日本の国益にこだわった観点とから、評価をしていくべきだろう。

今回の安倍首相のイラン訪問は、日本・イラン国交成立90周年を記念する訪問という意味付けを持っていた。実態としてトランプ大統領のメッセージを伝達する役割を担っていたことに焦点があたったのは、当然のことではあっただろう。

だがだからといって、安倍首相がイランとアメリカの間の紛争を完全に終結させないと訪問それ自体が失敗になる、と断じてしまうわけにはいかない。

今回の安倍首相のイラン訪問が国際情勢に持つ意味は、対話が成立していないアメリカとイランの間に、一つの外交ルートを通じた意思伝達の手段を提供する、ということにあった。

もちろんそれによって対立関係の解消につながる契機が生まれるのであれば、それは画期的なことであっただろうが、それはあまりに高すぎる目標である。

果たして安倍首相は、トランプ大統領がイランと直接「取引」を行うための準備を行おうとしたのか。いずれにしても、それも実現可能性は高くはなかった。