「韓国人や在日はNHK受信料を全員免除」というデマに思うこと

ある日の、父と母と私の話
金村 詩恩 プロフィール

もはや古典的といえるようなデマがいったい、いつからあるのか分からず、「いやぁ、どうしてこんなうわさが流れるんだろうね。まったく分からないや」とちぐはぐな答えをすると「ああ、そうなんだ」と母が言い、こうつづけた。

「これ、聴いた話なんだけど、あるひとがどっかから受信料がタダになるっていう噂を聴いて、役所にまで行ったそうなの。もちろん、そんな制度ないから窓口のひとたちは困っていたみたいだけどね」

ネットのデマはネットだけのものと思い込んでいたが、実際に外に飛び出しているとはじめて知った。

どのような返事をしてよいのか分からず、ふたたびテレビに目をやる。

〔PHOTO〕gettyimages

いまではNHKばかり観ている

すると天皇(現上皇)が即位して30周年目を祝う会が都内で開かれ、内閣総理大臣も出席していたというその場で日系ブラジル人5世の高校生が血のにじむような努力をしたであろう流ちょうな日本語でスピーチをした映像とニュース原稿を読むアナウンサーの無機質な声が流れていた。

なぜだか分からないけれども、わたしはそのニュースをまるで劇場で映画を楽しむときのようにじっくり観てしまった。

 

小さいころはNHKの教育番組をよく観ていたが、中学校に入ってからは小さな子どもや老人たちの観るチャンネルだと思うようになっていた。

年ごろの子どもにとって派手な演出のバラエティ番組のほうが魅力的に感じていたうえに、当時、お笑いブームが到来し、「こないだの『笑金』観た?」とか「昨日の『ガキ使』、最高だった!ダウンタウン、マジでかっこいいわ!」と休み時間に話すのが当たり前のようになり、NHKからはますます遠のいていった。

チャンネルの1か3のボタンをふたたび押すようになったのはドキュメンタリーを観るようになってからだった。思春期を抜け出したからなのか、あの放送局が放映している静かな番組の魅力に気づき、いまではNHKばかり観ている。