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「韓国人や在日はNHK受信料を全員免除」というデマに思うこと

ある日の、父と母と私の話

平成最後の、夫婦の小競り合い

元号が「令和」に代わる前のある昼のこと。

その時間帯に家族全員が揃うことはめったにないのだが、ゴールデンウィーク前であったので皆がリビングに集まって、いつぞやどこかで買ったキムチを冷蔵庫から出し、母が近所のスーパーで買ってきた安い寿司とカップラーメンと食べていた。

翌日から仕事で関西に行くことになっていたわたしは昼食の席で、何時のバスに乗り、どんな企画でどんなひとに会い、どこへ泊り、いつ帰ってくるかを話して、両親を安心させていた。

わたしの細かい報告を聴いた父は「分かった。泊まる場所はあとでLINEしてね」と言ったが「母はそこまで言わなくても大丈夫よ。この子は昔から落ち着きはないけど、ちゃんと連絡するから」と父をなだめていた。

すると「お前はなにも分かっていない。なにが起きるか分からないだろ」と母に言い、そのまま夫婦の小競り合いがはじまってしまった。どうすることもできないのでリビングに鎮座している大きなテレビに視線を移す。

食事中は「いったいだれの話を聴けばいいのか分からない」とわが家へはじめて訪ねてきた妹の夫が思わず言ってしまうくらいに、それぞれがしゃべっていて、だれもテレビなんか観ていないのだが、惰性でつけてしまっている。しかし、このときばかりはテレビに助けられたような気分だった。

 

「うちって、受信料払ってるよね?」

大きなプラズマ画面にはNHKのお昼のニュースが流れていた。小競り合いが本格的な戦争になる前にと、両親に「あのさ、うちって、受信料払ってるよね?」と訊いた。

父も母もきょとんとした顔をして、「当たり前じゃない。わたしたちはずっと払ってるわよ。払ってなかったらNHKが流れるわけないじゃない」と母が答えた。

「冗談、冗談」と笑いながら、最近、ネットで在日は受信料を払わなくてもいいっていう噂が流れているみたいよ」と、どこかのニュース記事で読んだことを話す。

父は「そんなわけないだろ」と苦笑し、母は「バカだねぇ、いったいいつからなんだか」とあきれてしまった様子だった。