通常2週間待つ検査を5時間で

クリフムでは、検査の結果が出るまでのスピードも驚異的だ。
例えば、初期の超音波でダウン症の可能性が高いとなった人は、ここでは妊娠初期に当たる11週から14週に「絨毛検査」という確定検査(はっきりしたことがわかる検査)を受けられる。絨毛は将来胎盤になる組織で、稀な例外を除いて胎児とDNAは同じだ。日本の一般的な確定検査である羊水検査は妊娠16週にならないと受けられないので、だいぶ早く受けられることになる。

検査から結果が出るまでの待ち時間も、日本では通常2~3週間くらいひたすら待つだけだが、クリフムでは、何とたった5時間で、非常に正確な「速報」を出している。時間のかかる細胞培養とは別に、21番染色体、18番染色体、13番染色体それぞれにある固有なSTRs(Short Tandem Repeats=塩基配列の繰り返し)の量を解析する「QF-PCR法」という検査法を採用しているのだ。

「速報を出しているところは、日本ではまだとても少ないですが、方式は違っても、先進国ではそれが普通になってきています。コスト・パフォーマンスも高いうえに非常に正確なので、ヨーロッパ、カナダでは、このQF-PCRが標準的な方法」と夫さんは言う。

実は、5時間というのは「世界最速」のようだ。というのは、クリフムでは、絨毛検査で採取された絨毛は、クリニックと同じビルの階下にある「リッツメディカル」という検査会社に持ち込まれる。「リッツ」は夫さんの名前「律子」の「律」。つまり夫さんは、結果を出すまでの時間を可能な限り短縮するため、何と、自前の検査会社をクリニックの真下に作ってしまったのだ。

母親に絨毛・羊水検査の速報を出すためにクリニックの真下に作った検査所・リッツメディカル 撮影/河合蘭

国内では学べるところはどこにもないので、リッツメディカルの技師たちは香港で技術を学んだ。

夫さんが、なぜこんなに急ぐかというと、理由はこうだ。

「長くは待てないと、確定検査を受けるのをやめて、中絶に走ってしまう人もいるのです」

他の施設で「異常がある確率が高い」と言われ、羊水検査ができる妊娠中期まで待ちきれない人も、ひとりで悩まず、ここにやってきて、SOSサイン出してほしいと夫さんは切に思っている。

まずは赤ちゃんを超音波で見て、その情報を使いながら相談に乗ってあげたいと言うのだ。クリフムの超音波検査は確定検査でこそないがかなり正確で、前の検査でもらった陽性の判定が偽陽性かどうかを推測する有力な手がかりになる。